2026年度行政視察報告 経済建設委員会

更新日:2026年07月02日

ページID: 8389

視察日程:2026年5月11日(月曜日)から13日(水曜日)まで

視察者:中島義浩 議員(委員長)、早川 航紀 議員(副委員長)、牧 重信、 議員 岡田宗之 議員、堀内章一 議員、岩田修二 議員

執行部:産業振興部長

視察地:東京都羽村市、埼玉県深谷市、岐阜県各務原市

1.東京都羽村市「羽村市動物公園のあり方に関する基本方針について」

選定理由

須坂市動物園は現在「直営」で運営されているが、全国的な人口減少、施設老朽化、物価高騰(光熱費・飼料代)など、地方自治体における動物園経営は極めて厳しい状況にある。 羽村市では、指定管理者制度(横浜八景島)を導入しつつ、令和6年度に「動物園のあり方に関する基本方針」を策定。さらに令和7年度からの「管理運営計画」を策定し、30年先を見据えた持続可能な経営へと舵を切っている。その戦略的アプローチを学び、須坂市の次期基本計画策定の知見とすることを目的とするため選定した。

視察先の状況

市の概要(令和8年5月1日時点)

市制施行:昭和41年4月1日
人口:53,994人(男性 27,404人、女性 26,590人)
世 帯 数:27,172世帯
面積:9.90平方キロメートル
一般会計:26,864,000,000円

取組の概要

羽村市は、上野や多摩といった大規模園との差別化を図るため、ベビーカーでも回りやすいサイズ感を活かした「ズーデビューなら、子ども真ん中・羽村」というコンセプトを掲げ、指定管理者がオリジナルグッズ開発やイベントを積極に行い、入園者数が微減傾向でも収益を向上させている。
また、大学との共同研究や、地元の製造業(日野自動車、カシオ計算機等)とのネーミングライツ、さらには市民参加型の「マルシェ」開催により、単なる行政施設ではなく「地域コミュニティの拠点」化を図っている。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:コスト削減のために行っている工夫は。
  • 回答:市では、コスト削減は魅力の低下に繋がると考えている。「経営」と「魅力」の両立という観点から、コストの削減ではなく、収入増につながる取組を行っている。

 

  • 質問:一般財源はどこから確保しているか。
  • 回答:クラウドファンディングなどを行っている。ただし、実施するタイミングを見計らっており、赤ちゃんが生まれた等注目を浴びて効果がありそうなタイミングで行う。

 

  • 質問:羽村市動物園は指定管理となっているが、この運営計画を考案したのはどこか。
  • 回答:市の提案から始まった。

 

  • 質問:動物のストレス軽減等、アニマルウェルフェアについて対策していることはあるか。
  • 回答:新型コロナウイルスが蔓延した時期から、動物とのふれあいを行わなくなった。様々な声はあったが、結果としてモルモットが長生きするようになった。動物のストレスが影響している部分が大きいと考えられるため、現在も行っていない。

 

  • 質問:整備を行っていく上で、どんな課題を想定しているか。
  • 回答:首都圏はPFIを導入すれば、ある程度の成功が約束されるが、羽村市はそうではない。今年度から公募等検討に着手する予定だが、民間の手が入ることで持続可能性の有無や魅力の向上に繋がるかどうかの判断が最も重要な課題になると考える。

須坂市への提言等

須坂市の予算が70億減額、ゼロベースという厳しい局面だからこそ、羽村市のように何を断念し、何を推進するかというコレクションプランを早期に策定することが、極めて重要になると感じた。そこで次のことを提言する。

1:「須坂らしさ」の再定義
臥竜公園全体を含めた「身近な動物園」としての強みを活かし、ターゲットを絞ったコンセプトを再構築すること。

2:経営視点の導入
直営であっても、「稼ぐ視点(グッズ開発・イベント・企業連携)」をより強化し、一般会計への依存度を低減させる努力が必要。

3:長期的な再整備計画の策定
「ゼロベース」の予算編成が進む中、どの施設を残し、どの動物種を継続するのか(コレクションプラン)という優先順位を、30年スパンで明確にすること。

「羽村市動物公園」の現地視察を行い、取組の説明を伺った。

「羽村市動物公園」を現地視察し、説明を伺う。

2.埼玉県深谷市 「農業における先進事例について(アグリテック集積都市 DEEP VALLEY の戦略)」

選定理由

須坂市は現在、ふるさと納税の指定取消に伴う大幅な歳入減(一般会計予算ベースで前年度比約72億円の削減、約270億円規模への緊縮)という極めて厳しい財政局面に立たされている。一方で、上信越道須坂長野東IC周辺の開発(イオンモール等の誘致)による集客増という好機も迎えている。

視察先の深谷市は、渋沢栄一翁の生誕地として「合本主義」の精神を継承しつつ、農業産出額県内1位(約300億円)を誇る「関東の台所」である。同市は「DEEP VALLEY」と称し、農業課題をテクノロジーで解決する「アグリテック企業」を戦略的に誘致。ふるさと納税の寄附金を財源に、現場農家と企業のマッチングや出資、実証実験を支援するエコシステムを構築している。

「産業用地不足(農地転用)」と「担い手不足」という共通課題に対し、深谷市がいかにして農業を補完する企業を選別・誘致し、地域経済の循環を生み出しているのか。その手法は、本市のインター周辺開発および農業振興施策にとって極めて重要な先行事例であると考え、選定した。

視察先の状況

視察先の概要(令和8年5月1日時点)

市制施行:1955年1月1日(合併により、2006年1月1日現・深谷市発足)
人口:139,883人(男性 69,974人、女性 69,909人)
世帯数:64,814世帯
面積:138.37平方キロメートル
一般会計:66,926,773,000円

取組の概要

(1) アグリテック集積戦略「DEEP VALLEY」の概要
深谷市は「農業版シリコンバレー」を目指し、2019年に戦略を策定し、事業を開始した。単なるハイテク機器の導入ではなく、以下の4点を柱としている。

1.農業課題の収集と発信: 農家から「具体的な困りごと」を吸い上げ、それを解決できる技術を持つ企業を公募。

2.アグリテックアワードの開催: 優れた提案企業に対し、市が「出資交渉権(最大1,000万円)」を付与し、株主として伴走支援を行う。

3.実証フィールドの提供(企業向け): 行政が仲介役となり、市内農地を企業の実証実験の場として提供。

4.企業の商品やサービスの導入推進(農業者向け):深谷市アグリテック導入支援事業補助金(深谷市独自補助金)を用意。先進技術を活用した製品について、購入額(利用料)の半額を補助。(購入の場合の上限、1年につき50万円、レンタルやサービス利用の場合の上限、1年につき20万円)


(2) 財源構成と経済循環
本事業の年間予算(約8,000万円)は、100パーセントふるさと納税(個人・企業版)を財源としている。深谷市のふるさと納税額(年間約9〜10億円)の約半分が「産業ブランド推進」に指定され、その枠内で「寄附額 > 事業費」の一般財源に負担のない事業運営を実現している。

(参考)
寄付を基金化し、難易度の高いプロジェクトに挑戦

  • 人を呼び込むための取り組み「野菜を楽しめるまちづくり戦略」
  • 新たな企業を誘致するための取り組み「アグリテック集積戦略」
  • 地域内経済循環を高める取り組み「地域通貨negi(ネギー)」


(3) 現場実装を支える「アグリテック交流施設 アグリ:code22深谷」
市役所内に専用の交流施設を設け、若手農家(40代以下を中心に全体の約15パーセントが参加)とIT企業の日常的な接点を作っている。夜間に農家が集まりやすい時間帯のセミナー開催や、農機具シェアリングサービスの展開など、現場の導入ハードルを下げる工夫が徹底されている。


(4) インター周辺開発と「野菜のテーマパーク」
花園IC周辺において、プレミアム・アウトレットの誘致と並行し、キユーピーグループと連携した「野菜な仲間たちパーク」を運営。広域からの観光客(年間500万人規模)を、農業体験や地場産品の消費に繋げる「観光・農業・商業」の三位一体のゾーニングを確立している。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:企業誘致の際、農地転用等のハードルや産業用地の確保はどう整理しているのか。
  • 回答:現時点ではスタートアップ中心のため、市内の空き事務所等の活用で対応できている。ただし、量産体制に入る企業の定着を見据え、かつての工場跡地(東芝跡地等)の有効活用や、農業を補完する企業に特化した開発検討が今後の課題である。

 

  • 質問:企業への直接的な金銭補助はないのか。
  • 回答:企業への「補助金」ではなく、農家がアグリテック製品を導入・利用する際の「半額補助(上限あり)」を行っている。これにより企業は「深谷市なら売りやすい(使い始めてもらいやすい)」というメリットを感じ、結果として拠点を移す誘致の呼び水となっている。

 

  • 質問:農業課題の「データバンク化」のプロセスは。
  • 回答:会員登録制(現在約180名)を導入し、登録時に課題をアンケート収集するほか、交流施設での日常会話から課題を吸い上げている。

須坂市への提言等

視察を通じて得られた知見から、本市においても「インター周辺開発」と「財政再建」の両立に向け、以下の4点を提言する。


1. 「課題起点」の企業誘致戦略への転換
深谷市の事例は「企業に来てもらう」のではなく「農業の課題を解決する企業を選ぶ」という姿勢が鮮明であった。本市においても、果樹農業特有の課題(傾斜地作業、高所作業、防鳥獣対策)をデータ化し、「これらを解決する技術を持つ企業」を優先的に誘致する基準を策定すべきである。深谷市の事例からもアグリテック企業においては中小規模の企業が多く、まずは小さい事務所スペースなどがあれば誘致は可能。市内空き施設や空き地の活用にもつながる。


2. ふるさと納税を「未来への投資財源」に再定義
指定取消期間を経て再開する際は、寄附金を単なる一般経費の補填ではなく、深谷市のように「アグリテック導入支援」や「積極的な農家の経営強化」に限定した「投資的財源」として活用し、寄附者に使途の成果を明確に示すブランド再構築を行うべきである。客観的にみて産地ブランド化に力を入れている姿勢を示すことが大切。


3. 須坂市内を「農業の巨大ショールーム」へ
イオンモールや周辺施設への集客(年間数百万人想定)を、単なる商業消費で終わらせない仕組みが必要である。深谷市のように、最新のアグリテックや須坂の果樹文化を「体験・購入」できる拠点を官民連携で強化し、市内中心部や農地への回遊性を高める設計を求める。


4. 「産官学」の連携による現場実装
民間企業や長野県試験場、高校・大学の研究を、理論に留めず「現場での実証実験」へ繋げる。深谷市のように「行政が仲介し、農家が安心して新技術を試せる環境」を整備し、須坂市を「果樹テックの聖地」として企業の開発拠点を呼び込む環境づくりを早急に進めるべきである。


5.環境配慮・スマート農業機械導入事業の推進
須坂市独自の補助金として深谷市アグリテック導入支援事業補助金に類似する環境配慮・スマート農業機械導入事業補助金がある。深谷市に比べて須坂市の補助金の利用が少ないのは、果樹栽培がメインで機械化が難しいという理由もあるが、ソフト面での伴走支援体制が脆弱なことも理由にあげられる。須坂市として未来の農業戦略を今一度見直し、将来の須坂市の果樹ブランドの醸成と、高齢化、担い手不足、繁忙期の労働力不足などの課題解決につながるような戦略の見直しを早急に実施するべきである。

深谷市役所において、アグリテック戦略について説明を伺う。

深谷市役所において、アグリテック戦略について説明を伺う。

3.岐阜県各務原市 「学びの森官民連携型賑わい拠点創出事業(Park-PFI 事業)について」

選定理由

当市には、桜の名所 100 選にも選ばれるほか、動物園が併設されていることなどから、多くの市民に愛されている都市公園(臥竜公園)がある。エリア内には社会教育施設や、隣接して野球場や庭球場といったスポーツ施設が整備されているが、近年の財政ひっ迫により、老朽化への対応が十分に行えず、利用者数は減少傾向が続いている。

過去に、官民連携リノベーションにより大規模改修を検討したが、市民からの意見等により、大規模での実施は困難であるとの結論に至った。

各務原市は、学びの森官民連携型賑わい拠点創出事業において、公園運営や地域住民参加型の学び・交流の場づくりを先進的に実践しており、民間活力の活用による運営手法や地域連携の工夫など、参考とするところが多く、事業の成果や運営上の課題解決の取り組みなども含め、当市の今後の施策検討に活かすうえで、非常に参考になる内容であると思料し、当市の課題解決と施策の具体的検討に資する視察先として選定した。

視察先の状況

市の概要(令和8年年4月1日現在)

市制施行:昭和38年(1963年)那加町、稲羽町、鵜沼町、蘇原町が合併し各務原市が誕生
平成16年羽島郡川島町と合併し、新各務原市誕生

人口:143,027人(男性 70,834人、女性 72,193人)

世帯数:64,134世帯

面積:87.81平方キロメートル

財政規模:令和8年度一般会計予算:62,040,000,000円:財政力指数:0.847

ふるさと納税実績:令和6年度 351,522,000円

交通アクセス: 東海北陸自動車道・岐阜各務原インターチェンジより12分、名鉄各務原線「各務原市役所前駅」下車徒歩2分(市役所まで)

特徴:平成27年度から、まちづくりの羅針盤となる「各務原市総合計画」にしたがって、「誇り」、「やさしさ」、「活力」の基本理念のもと、「しあわせを実感できるまち」の実現を目指して、さまざまな取組を展開しています。人口減少時代に対応するためには、10年先、20年先の未来を見据え、教育や子育て、防災や産業・雇用などあらゆる分野で「一手先を行くまちづくり」が必要との視点で、「ひと」、「くらし」、「まち」をともにつくり育むために、市民や自治会、NPO、企業、行政などが一丸となり、「ずっと、このまちで」と思ってもらえるよう「オール各務原」で取り組んでいます。

取組の概要

「学びの森官民連携型賑わい拠点創出事業」とは、市民公園・学びの森エリアに賑わいを創出し、エリ
アの価値をさらに高めていくための公民連携事業。Park-PFI制度により公募対象公園施設である収益施設の設置とその周辺の特定公園施設の整備・運営を行う事業者を公募。具体的には、飲食店、売店等の公園利用者の利便の向上に資する公募対象施設の設置と、当該施設から生ずる収益を活用して、その周辺の園路、広場等の一般の公園利用者が利用できる特定公園施設の整備・改修等を一体的に行う者を、公募により選定する制度で、都市公園に民間の優良な投資を誘導し、公園管理者の財政負担を軽減しつつ、都市公園の質の向上、公園利用者の利便の向上を図る新たな整備・管理手法。
学びの森は、旧岐阜大学の農場跡地という歴史と、周辺に教育施設が立地することから名づけられた都市公園で、市の中心市街地にありながら、広大な緑地空間を有し、多くの市民の憩いの場として利用されている。近年では、学びの森を中心に開催している「マーケット日和」などのイベントや、公園内にあるカフェ・ギャラリー「雲のテラス」を市民団体が活用することにより、新たな公園の使い方が提案され、公園に賑わいが創出されつつあった。
この賑わいをより確かなものとするため、臨時的に「那加福祉センター・勤労会館駐車場」として利用されていた区域を「学びの森」へ編入し、平成29年6月施行の改正都市公園法で創設された「公募設置管理制度(Park-PFI)」による事業化を推進した。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:民間事業者の運営が、公園の公共性を損なわないよう、市はどのような指標で評価や指導を行っているか。
  • 回答:事業対象地は公園全体の面積4.2haのうち0.2haであり、公園全体の公共性は担保されているため、自由度の高い運営を行ってもらっている。また、本事業単体で評価指標を設けてはおらず、エリア全体の賑わい創出を念頭に置いた「市民公園・学びの森の公園使用許可件数」をKPIとして計上している。

 

  • 質問:商業色が強くなりすぎないよう、景観や植生に制限を設けているか。
  • 回答:商業色という観点ではなく、事業対象地が市景観計画における重点風景地区として指定しているエリアとなるため、色彩などの風景形成基準を遵守してもらっている。

 

  • 質問:『古くからの公園ファン』と『新しいおしゃれな施設を求める層』のニーズをどうバランス調整 されたか。
  • 回答:本事業は、20~30 代の女性をメインターゲット層に設定して実施しており、特段ニーズのバランス調整は行っていない。

 

  • 質問:市民を巻き込んだ取り組みはあるか。
  • 回答:運営事業者が開催するイベント等において、市民の活躍の場となるような企画を実施していただいている。

須坂市への提言等

須坂市民の憩いの場である臥竜公園一帯の有機的利用計画については過去において多くの議論が交わされてきている。しかし、現在に至っても有効な手段を見いだせていない。
従前の計画は、一帯のすべてを網羅した計画であり、財政的にも課題が多くあったのではないか。現在設定されている6つのゾーンごとに個別のプラン設定を行い、中心ゾーンに核となる「賑わい・集客施設」を設置する等の拠点的な利用計画を構築すべきではないか。当然プランにあった資金投入、国・県補助や「パーク・PFI」のような官民連携を視野に入れた手法の選択肢も広がるのではないか。

KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE

各務原市が学びの森周辺エリアを「緑の中の賑わいある新しいまちの顔」にすべく、官民連携で事業を行う「Park-PFI制度」を活用し生まれた施設「KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE」

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