2025年度行政視察報告 経済建設委員会
視察日程:2025年11月5日(水曜日)から7日(金曜日)まで
視察者:中島義浩 議員(委員長)、早川 航紀 議員(副委員長)、牧 重信、 議員 岡田宗之 議員、堀内章一 議員
執行部:産業振興部 商業観光課長
視察地:佐賀県多久市、福岡県糸島市、佐賀県唐津市
1.佐賀県多久市「サテライトオフィスによる企業誘致について」
選定理由
須坂市ふれあい健康センター「湯っ蔵んど」は、今後民営化する方針として、市民への説明会やサウンディング型市場調査を行い、議会と協議をしながら無償譲渡の準備を進めている。
その他の公共施設についても、施設は老朽化し、維持管理経費、修繕費、更新費用の増大が見込まれており、今後の施設のあり方や譲渡が決定した場合の有効活用等を研究する必要性があることから、民間運営施設(温泉施設、宿泊施設)へ「サテライトオフィス」を開設し、企業誘致の取組事例を選定した。
視察先の状況
市の概要
市制施行:昭和29年5月1日
人口:17,353人(男性 8,247人、女性 9,106人)
世帯数:7,914世帯
面積:96.56平方キロメートル
職員定数:318人
一般会計:15,040,000,000円
交通アクセス:佐賀県内の中心に位置し、良好なアクセス環境である。
特徴:多久聖廟(1708年創建)、孔子を祀る伝統行事「釈菜」は、300年以上継続。
取組の概要
多久市は、地方創生テレワーク交付金を活用し、民間運営施設(温泉施設、宿泊施設)へ「サテライトオフィス」を開設するための支援を行い、施設の活性化を図るとともに、市外企業を誘致し廃用促進や地域活性化に取り組んでいる。
多久市は県外企業3社と進出協定を締結すると伴に、地方創生に向けた相互連携協定を行った。
協定を結んだ3社は、サテライトオフィスには常駐はせず、イベルト等の集客による受益者負担の中で事業を行っており、地元の雇用もあるとのこと。
今後、更なる雇用創出と地元企業とのビジネスマッチングによる地域活性化、新たな人の流れの創出を図っていくとのこと。
質疑応答(抜粋)
- 質問:温泉施設や宿泊施設をサテライトオフィスとするメリットとデメリットは。
- 回答:メリットは施設側へ賃借料が入ること、交流人口の増加により経済が活性化すること。デメリットは特にない。
- 質問:地元の方の雇用創出に結びついた事例は。
- 回答:過去に株式会社イノベーションパートナーズにおいて、1名(移住者)の採用があった。現在は退職しているが、引き続き、多久市に在住し、タウンマネージャーとして地域活性化に取り組んでいる。
- 質問:地域への波及効果は。
- 回答:数字がないので具体的な効果は不明。1名(移住者)を雇用しており、タウンマネージャーとして活躍し、ウォールアートプロジェクトなどで、地域活性化に取り組んでいることから少なからず効果はあるとみている。
- 質問:KPIの設定と検証結果は。
- 回答:国の交付金を活用しているため、5年間報告が必要。KPIとして、「誘致する企業数:3社」、「サテライトオフィス利用者数 最終年度延べ1,000人以上」、「施設利用者数(県外者)設置施設それぞれ60パーセント」、「移住者数:2人」を設定。移住者数以外は達成した。
須坂市への提言等
視察をとおして、地方創生交付金を活用するからには、受益者負担の中で、一部の市民が思恵を受けるだけでなく、市全体がサテライトオフィスで恩恵を受ける体制が必要であると感じた。
サテライトオフィスを開設することにより、市政、学校、病院、企業等市全体がさらなる発展に繋がるような事業展開をすることが最も必要ではないかと考える。
サテライトオフィスを開設した施設「天山多久温泉TAQUA」を現地視察し、進出企業から説明を伺う。
2.福岡県糸島市 「副業プロ人材を活用した事業者支援について」
選定理由
須坂長野東インターチェンジ周辺地区の民間開発が進み、「ルートイン須坂」や、県内最大級の大型商業施設「イオンモール須坂」等が開業し、賑わいを見せている。
大型商業施設は、市街地から比較的郊外にあり、魅力のある様々な店舗が出店しており、長時間の滞在が予想され、市街地への人の流れや事業者の経済状況に影響がないか注視している。
市全体の経済効果をより高めるには、市内事業者のプロモーションや販路拡大などの支援を行うことも必要になると考えており、首都圏のプロ人材を活用し、伴奏支援を行っている取組が参考になると考え、選定した。
視察先の状況
視察先の概要
市制施行:平成22年1月1日(1市2町合併)
人口:104,120人(男性 50,046人、女性 54,074人)2025年10月31日現在
平成28年から増加傾向
世帯数:47,475世帯
面積:215.69㎢
一般会計:51,410,794,000円
交通アクセス:福岡市に隣接し、乗り換えなしで新幹線・飛行機アクセスできる。
特徴:九州大学(国立)が立地、イギリス発の世界的な情報誌「MONOCLE(モノクル)」が実施した「輝く小さな街」の2021年ランキングで、住みやすさ、ビジネス機会、移住者への寛容さ等が総合的に評価され、世界第3位に選ばれた。
2024年のNHK連続テレビ小説「おむすび」の舞台地となった。
取組の概要
糸島市では、市内事業者が抱える深刻な経営課題や人材不足に対して、副業プロ人材を活用した伴走支援事業を実施している。2026年度までは株式会社カルビンが委託事業者として支援を担うが、2027年度以降は、この支援プロセスを地元商工会の経営指導者が引き継げる体制づくりを目標としている。
株式会社カルビンだけでは事業者の課題把握からマッチングまでを完全にカバーすることは難しいため、現在は地元商工会職員が事業者を一緒に訪問し、悩みやニーズを吸い上げながら、副業プロ人材とのマッチングを支える役割を担っている。
糸島市としては、この取り組みを継続・発展させるため、経済部門の補助制度の整備を進め、商工会と連携しながら支援基盤を構築している。
事業の目的の1つは、市内で副業プロ人材活用の成功事例を創出し、その有効性を確立すること。
もう1つは、伴走支援のプロセスを通じて、商工会が自走的に副業プロ人材マッチングを行える支援体制を構築することの2つ。
この体制が整うことで、2027年度以降は商工会の経営指導者が、市内事業者と副業プロ人材を継続的に結びつけることが可能になり、「副業プロ人材を活用する」という新たな選択肢が地域全体に定着していくことが期待されているとしている。
質疑応答(抜粋)
- 質問:株式会社カルビンから移行後、商工会が同じ手法で事業できるのか。
- 回答:心配はあるが、市も支援する。株式会社カルビンのレベルで支援できるかは課題。
- 質問:事業の成果は。
- 回答:市は年度末に成果を上げたいため、3か月で成果の出る事業をお願いしている。情報リテラシーマニュアルの整備など、目に見える成果と目に見えない成果がある。
- 質問:短期間で成果を出すのは難しいのでは。
- 回答:ハードだと思うが課題しだいかと思う。
- 質問:市の関わりは。
- 回答:伴奏支援する事業者の選定を株式会社カルビン、商工会と一緒に行っている。状況確認として、アンケート調査や事業者向けの意見交換会も行っている。事業者が株式会社カルビンに伝えにくいことがあれば、商工会を通して伝える。
- 質問:問題が起きたときの行政の対応は。
- 回答:特に問題は起きていない。3か月以上経過してトラブルとなっても市は関与しない。
- 質問:株式会社カルビンとはどのような企業なのか。
- 回答:国内で初めて副業支援を行ったコンサルティング会社。石川県で実績があった。市内には同事業を行っている企業はなかった。
- 質問:何社応募があるのか。
- 回答:ホームページや広報誌の掲載だけでは、応募が少ない。商工会と連携して、市職員で企業を回っている。まずは、社長に事業を理解してもらわないといけないので、対面で話している。
- 質問:産業振興アドバイザー制度はあるか。
- 回答:ここ3から4年はそのような制度はない。
須坂市への提言等
副業プロ人材を活用した伴走支援事業を導入することで、これまで踏み出せなかった課題「新規販路開拓」、「デジタル化」、「ブランディング」など、従来の支援だけでは手の届かなかった領域に大きな力を発揮できることになる。
糸島市役所での視察後、民設民営の未来型公民館ともいえる施設、オープンコミュニティスペース「みんなの」を視察し、施設の運営者から中心市街地活性化の取組について、説明を伺う。
3.佐賀県唐津市 「唐津市厳木温泉佐用姫の湯の民間移譲について」
選定理由
唐津市では市内にある指定管理施設「厳木温泉佐用姫の湯」について2025年7月に民間譲渡に向けた公募を実施。結果としては応募事業者がなかったため、現在再公募に向けて譲渡条件の見直しを行なっているとのこと。
須坂市ではふれあい健康センター「湯っ蔵んど」について、2026年2月には公募要件をまとめ、2027年4月移行の民間完全移行を目指している。
先行して類似施設の民間譲渡に向けた公募を実施した唐津市にて話を伺い、現地視察を実施することで、湯っ蔵んどについて、市民の納得がいき、且つ円滑な民間譲渡に向けての条件や懸念事項について検証する。
視察先の状況
市の概要
市制施行:昭和7年1月1日(平成の大合併により人口が13万4,000人となる)
人口:112,715人(男性 53,243人、女性 59,472人)
世帯数:51,432世帯
面積:487.58平方キロメートル
職員定数:1,370人
一般会計:89,496,082,000円
特徴:日本三大松原の一つ「虹の松原」が国の特別名勝に指定されている。「唐津くんちの曳山行列」と「呼子大綱引き」は重要無形民俗文化財として国の指定を受けている。「唐津くんちの曳山行列」は、平成28年12月1日に「ユネスコ無形文化遺産」に登録が決定されている。
視察先と湯っ蔵んどの比較
| 施設名 | 唐津市厳木温泉佐用姫の湯 | 須坂市ふれあい健康センター 湯っ蔵んど |
|---|---|---|
| 建築年月 | 1993年 | 1997年 |
| 敷地面積 | 2,723平方メートル | 35,778平方メートル |
| 延床面積 | 1,378平方メートル | 5,486平方メートル |
| 年間利用者数 | 74,754人 | 235,349人 |
| 指定管理料 | 年間 約2,400万円 | 0円 |
| 運営費、修繕費 | 約300万円 | 約570万円 |
| 入浴料 | 500円 | 750円 |
民間譲渡に向けた公募条件(比較)須坂市は9月議会時の仮条件
| 施設名 | 唐津市厳木温泉佐用姫の湯 | 須坂市ふれあい健康センター 湯っ蔵んど |
|---|---|---|
| 土地、建物、付帯設備及び構築物の譲渡 | 有償譲渡 | 無償譲渡 |
| 物品 | 無償譲渡 | 無償譲渡 |
| 温泉源権利 | 譲渡対象外 ただし温泉水は有償使用 |
無償譲渡 |
| その他条件 | 入浴事業を10年間継続すること | 入浴事業を5年間継続すること |
質疑応答(抜粋)
- 質問:民間譲渡に至った経緯は。
- 回答:地域民民で構成する検討委員会を設置して当初の公共施設再配置計画が作成され、市議会による特別委員会の提言を経て、現在の公共施設再配置計画になった。計画では観光温泉施設は民営化を進め、民営化できない施設は用途廃止を進めることになっている。
- 質問:サウンディング市場調査を実施したか。
- 回答:実施していない。
- 質問:民間移譲に関して、市から補助(修繕費等)をする予定はあるか。
- 回答:予定なし。
- 質問:譲渡価格について民間譲渡に向けた条件をどのように設定したか。
- 回答:土地、建物、付帯設備及び構築物の譲渡については鑑定評価額を参考に最低譲渡価格として22,100,000円に設定。
- 質問:運営制限について民間譲渡に向けた条件をどのように設定したか。
- 回答:入浴事業を10年間継続することは市の他の前例を参考にして期間を決めた。(そちらも民営化に向けた公募をしたが今回決まらなかった。)温泉の権利は譲渡しないことは、万が一の抵抗要件として市の所有を継続することを決めた。(湯量が少なく枯渇が懸念されるために譲渡しない。)
- 質問:現指定管理者の継続意向はなかったのか。
- 回答:指定管理料含めて、温浴事業(委託事業)は1500万の年間赤字、自主事業は年間1800万の黒字。収支200万円の黒字の為、現指定管理者からは今の条件であれば運営を継続する意向と聞いていたが、委託料がないと運営をすることは難しいという判断から、民間譲渡への申込はなかった。
- 質問:施設について、応募者いなければ廃止もやむを得ないという方針とのことだが、温泉施設がなくなることに対して、民や議会からの合意形成は得られているのか。
- 回答:基になっている公共施設再配置計画は民が策定して、議会で承認を得た計画。ただ地元民としては民営化して入浴事業は継続をする前提だと考えていると思う。いざ廃止となったら反対の声があがることも予想される。
- 質問:今後、条件緩和をして再公募する予定は。
- 回答:有償譲渡の条件は変えずに、譲渡価格を2割ほど下げて、再公募を検討している。また、源泉の権利についても市が保有することで市としては今後も継続して維持管理が必要となる側面もある為、源泉も有償譲渡を検討。入浴事業の継続要件も10年を短くするべきか検討している。
- 質問:無償譲渡にしない理由は。
- 回答:応募してくる企業の体力を見極める理由もある。10年間継続条件で運営できる会社を探すが、温泉施設だけを単独で黒字化するのは難しいのではないかと考えている。(大きな資本をもつ企業の参入を期待している。)市の財産を無償譲渡することに対して市民反発もある。
- 質問:海外資本の企業に売却する可能性は。
- 回答:可能性としてはある。
須坂市への提言等
須坂市において市民関心の高い、温泉施設「湯っ蔵んど」の民間無償譲渡の公募条件の決定が間近に控える中、委員会として9月議会時に提出された公募要件(案)が適正かどうか検討するのに参考になった。
唐津市では施設の規模や地域にとっての存在感などの前提に違いがあるが、須坂市が考えている民間譲渡の条件よりもかなり制限がある内容で公募した結果、応募がなく、再公募するか、廃止に向けて動くのか検討している。
須坂市にとっても大事な市民の財産だからこそ、どのような条件であれば今後も温泉事業を継続してくれる事業者さんが応募してくるか、一方で条件を緩和しすぎることで地域や市にとってのリスクや損失にならないかなど、残された時間の中で議論を重ねたい。
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更新日:2026年02月03日