2023年度行政視察報告 経済建設委員会

更新日:2024年03月26日

ページID: 1279

視察日程:2023年5月24日(水曜日)~5月26日(金曜日)

視察者:酒井和裕議員(委員長)、西脇隆議員(副委員長)、荒井敏議員、堀内章一議員、中島義浩議員、石合敬議員

執行部:産業振興部産業連携開発課 村石保係長

視察地:大阪府泉南市、和歌山県田辺市、和歌山県紀の川市

1.大阪府泉南市 「泉南りんくう公園(泉南ロングパーク)事業について」

選定理由

当市では、官民連携リノベーションによる臥竜公園一帯の大規模改修を検討したが、市民からの意見や要望等を精査した結果、事業を進めることは難しいとの結論となった。しかし、部分的な官民連携事業は、可能と考えており、提案のあった場合は、引き続き検討したいと考えている。

視察市は、賑わい・交流拠点として市費を投入せず独立採算事業で整備、維持管理・運営を実施が行われている。また、公園周辺にはイオンモールが開発され、相乗効果により、市の活性化を図られているため、今後の取組の参考とすべく選定した。

視察先の状況

市の概要

  • 人口:59,270人(2023年3月末時点)
  • 世帯:26,485世帯
  • 面積:48.98平方キロメートル

市の概要および公園の特徴

面積約49平方キロメートル、人口約59,000人、大阪都心から1時間、大阪湾・関西空港を望む海岸域で、岡田漁港と樽井漁港に挟まれ約26ヘクタールの細長い公園。

大阪府の公園用地を無償で借受けている。

事業方式はPFI事業(BOT方式とBOO方式の併用)、PFI事業者は駐車場、飲食施設、アスレチック施設など任意施設の運営による収入で必須施設である園路や植栽の維持管理も行う。ただし、固定資産税等は10年間実質負担無し。公園利用者の滞在時間はそれほど長くはない。ホテル用地は確保されているが、予定していた施設はまだ建設されていない。

視察行程等

市役所で公共施設再編課職員、現地事務所で大和リース株式会社社員に説明を受けた後、駐車場、海岸、テナント地域の現地視察をする。

年間来場者数は車両1台換算で約150万人。公園整備費は、25奥苑。公園内のテナント物件は大和リース株式会社のみが建築でき賃貸とのこと。

イオンモールが隣接していたため、併せて視察する。双方の利用者が行き交わい相乗効果あり。

施設格差・季節格差はかなり大きく冬は我慢とのこと。利益は無く、公園事業の経験を積むための実験的事業。

泉南市との質疑応答(抜粋)

  • 質問:来園者数の状況は。
  • 回答:年間約150万人(公園内駐車場の駐車台数を基に算出(車両1台4人)計算)。近隣のイオンモールに駐車する来園者もいるため、概算である。
  • 質問:PFI方式(BOT方式、BOO方式)で事業を実施した経過は。
  • 回答:お金を掛けない、所有権を持たないという市長方針のもとに事業を実施した。そのため、PFI方式とし、独立採算型事業としている。
  • 質問:指定管理者としなかったメリットはなにか。
  • 回答:条例を制定する必要がなく、料金も自由に設定できる。サウンディング調査で、市がお金を出さなければ事業者は来ないと指摘は受けた。
  • 質問:恋人の聖地の補助金を活用していないのか。
  • 回答:公園への誘客促進のため、別の部署でイベント等、ソフト事業を中心に実施している。補助金を活用しているかは、わからない。

事業者との質疑応答(抜粋)

  • 質問:リピーターは把握しているか。
  • 回答:正直わからない。散歩、ランニングなど通常利用が多いと感じる。
  • 質問:親子での利用が多いと思うが、利用者の年齢層は。
  • 回答:家族連れをターゲットとして運営を開始したが、予想以上に若い世代の利用が多い。
  • 質問:冬期は利用者が少ない季節だと思うが、対策はしているか。
  • 回答:クリスマスや正月にイベントを開催している。冬は潮風が強く、利用者の安全確保が難しいため、冬は耐える状況。シーズンの良い夏などに費用を掛け、利用者の増加を図っている。
  • 質問:公園整備に係る総事業費は。
  • 回答:25億円である。
  • 質問:指定管理料を貰わずに運営するメリットはなにか。
  • 回答:利益が出るからやるという事業ではなく、公園事業の経験を積む意味で実施している。

今後の臥竜公園へ

開設されて間もないが、市のリスクが非常に少なく、事業者のリスクが大きいように見受けられる。

2つの漁港、スタジアム、2つのビーチそしてイオンモールが近接しており連携することによる効果は大きいと考えられるので今後の展開次第と思われる。平日の午後にも関わらず、テナントの飲食店はかなりの客数であった。夕日百選のビーチは恋人の聖地にも選定されているとおり、夕日が素晴らしいと思われる。ビーチは穏やかで、夏は多くの海水浴客でかなりの賑わいが予想される。インバウンド需要も戻ってくればいっそ賑わいが考えられる。バーベキュー施設、キャンプ場、グランピング施設は季節性があり、マルシェは常時開催できないため相応の工夫が必要と思われる。

天然温泉の合宿施設もあるので、スポーツツーリズムにはプラス。海岸の砂地の除草が行われていなく残念だった。臥竜公園域には非収益性の動物園や臥竜山があるので、全体的な導入には一部難があるように思われる。ただし、今後の人口減少や税収の大幅増が考えられない。さらに、ふるさと納税額は不確定要素が大きい。いずれ、公園内施設への民間事業者の関与または参入が必要なときを想定しなければならないだろう。

2.和歌山県田辺市 「たなべ未来創造塾の取組について」

選定理由

田辺市は、産学官金が一体となり、本業を活かしてできるビジネスモデルを創出、ビジネスリーダーの育成を目指し、地域の課題をビジネスで解決する「たなべ未来創造塾」に取組み、様々なビジネスを展開し、地域課題を解決していることから、参考とすべく選定した。

視察先の状況

取組の概要

田辺市では、空き家や空き店舗の増加など、少子高齢化や人口減少を踏まえた地域課題解決に向けて、世界遺産「熊野古道」をはじめとする多くの地域資源の利活用を行うことで、ビジネスモデルの創出、ビジネスリーダーの育成を目指した「たなべ未来創造塾」を2016年に創設。その特色は、地域を担う異業種の方々を選抜して未来塾を運営し、産・学・官・金が一体となって地域の担い手育成、CSVの醸成に向けた継続した取組を行なっていること。現在まで82名の修了者がいる。

異業種間での情報共有をし、ビジネスモデル構築を地域活性化の原動力としているが、異業種間での交流よりも、同じカテゴリーでの交流が多くなることが課題としてあるように思う。

ビジネスプランのポイントは、地域と企業がウィン・ウィンとなる関係性を構築すること。自社や地域の強みを生かして、他にはマネのできない、地域に根差したビジネスモデルの構築を目指している。

ビジネスモデルの例

ボクモク 入り口から出口まで

熊野では林業従事者の減少により、人手が入らなくなることで山が荒れ、貴重な地域資源である「紀州材」に影響が出てきている。「スギノアカネトラカミキリ」によって食害された木材「あかね材」や、山の荒廃による土砂災害、下流では漁獲量の減少などがある。

ボクモクは「山を取り巻く問題を解決するために何ができるか?」を問い続け、「地域の山や資源を守って行こう!」を共通の目標と発想で「あかね材」の商品化するプロジェクトを立ち上げる。

ボクモクの強みとは普段から木材を扱い、山について詳しい各分野の専門家が連携して取り組むことで得意分野を活かしつつ、情報交換しながら入り口から出口まで道筋を明確にし、プロジェクトを進め、様々な視点から挑戦している。

森林コンサルタント、製材業、木工職人、一級建築士、家具販売業、グラフィックデザイナーの6名によって地域内で入り口から出口まで木材に関わる事業所が終結している。

自分たちの畑は自分たちで守る。若手農家で「チームHINATA」結成。

鳥獣害を食い止めるために、若手農家が集結本業である農業を営みながら、畑を荒らすイノシシやシカの狩猟を行い、狩猟後の肉をジビエとして販売。また、生産する柑橘類・梅の加工販売や、農業・狩猟を体験しながら食についての学びを行っている。田辺市上芳養日向(かみはやひなた)地区の若手農家が集まって狩猟を始めた「チームHINATA」が前身となり、日向屋として起業。

日向屋は、狩猟体験を盛り込んだグリーンツーリズムを企画。都会の人たちが猟や解体作業を見学することができ、さらに、獣害対策だけでなく、人手不足解消のため、福祉作業所の利用者に農作業を担ってもらう「農福連携」などにも取り組んでいる。休暇を楽しみ見ながら仕事もこなす「ワーケーション」も受け入れビジネスモデルの先駆を走る。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:異業種での交流が必要かと思うが、同じ業種の人が塾に参加しても問題ないか。
  • 回答:例えば農家さんが二人募集してきた場合は、断ることはできない。ただし、色々なジャンルの方が集まると意外な事業が生まれやすいので、なるべくそのような会にしたいと考えている。
  • 質問:事業費はいくらか。
  • 回答:300万円。内訳は、講師謝礼、費用弁償、大学への負担金、冊子作成費用であり、補助金はない。
  • 質問:新たなビジネスを行うには、資金が必要。金融機関とも連携していて、相談体制は整っているとのことだが、融資が受けられない場合もあると思う。その場合はどうするのか。
  • 回答:起業に関しては、別の部署で補助金を出してサポートしている。市民益が大きい事業(ビジネスプラン)については、行政も金融機関に同行しサポートする。
  • 質問:たなべ未来創造塾で苦労されているところは。
  • 回答:塾生を公募するが、中々集まらない。地域のネットワークを活用し、情報収集した中から参加してくれそうな人材のリストを作成している。集まらない場合は、リストから人選し、直接ヒアリングを行っている。受講途中で辞めてしまったり、時には喧嘩もあるため、行政がハンドリングしなくてはいけない。

須坂市への提言等

未来塾の運営は、産・学・官・金が一体となって推進しているが、財政的な行政からの支援はなく金融機関が主に支援の中心となっている。

起業するにあたり、金融機関が支援することで、起業側の提案に対して生産性が芳しくない企画であれば、金融機関の提案に寄り添った形となり、結果として起業する側の提案が採用されないのでなないかとの質疑あったが、基本的に企画立案から金融機関が関わるため起業する側の企画は反映されるとの回答があった。

須坂市では、産学官連携の取り組みを行っているがその事業の評価については、未公表。

地域課題解決に向けた起業の為の産・学・官・金が一体となって推進する事業構築を「たなべ未来創造塾」から学ぶことができた。

3.和歌山県紀の川市 「紀の川フルーツ・ツーリズムの取組について」 「フルーツエール事業(はっさくプロジェクト等)の取組について」

選定理由

紀の川市は、須坂市同様に全国的にも有数の果物産地であり、その特性を活かしたフルーツ・ツーリズムやフルーツビール(はっさくプロジェクト)等、様々な取組をされており、参考とするため、視察先として選定させていただきました。

視察先の状況

紀の川市は平成17年に打田町、粉河町、那賀町、桃山町、貴志川長の5市が合併し、面積が、228.24平方キロメートルの内、耕作地は2割、人口約6万人で基幹産業は農業、その約7割が果樹生産です。

特にはっさくとイチジクは全国1位、桃が2位、柿が3位、キウイが4位とまさに果樹王国です。

しかし、果物の産地ではあるが、それを交流・観光に積極的に生かしてこなかったので、県の「わがまち元気プロジェクト支援補助金」3年間で500万円や、地域総合整備財団から、「短期診断(平成25年)」「環境整備型(平成25年)」「新・地域再生マネージャー助成事業(平成27から平成28年)」にそれぞれ年間700万円の支援を頂いてフルーツ・ツーリズム事業を展開してきた。

「紀の川フルーツ・ツーリズム」の取り組みについて

事業目的

近隣大都市住民をターゲットに体験型観光を推進するとともに、紀の川市の一番の魅力=地域資源である「フルーツ」に焦点をあてた地域づくり・生業起こしを展開。誘客の仕掛けと市民自らが考え実行していける体制を整え、情報発信を行う事で、地域内外から紀の川市のファンを獲得するとともに、観光消費額の増加を図る。以上の取り組みの先駆けとなる市民活動の、継続的な体制づくりを目的とする。

事業内容

  1. 持続的体制の構築
  2. 商品開発
  3. 体験プログラムの開発と体験イベントの実施
  4. フルーツのまちの雰囲気づくり
  5. 気運の醸成
  6. フルーツのまちのプロモーション強化
  7. その他(泊まれる紀の川市になろう運動)

フルーツ・ツーリズムの実施体制とスケジュール

  • 全体事務局は紀の川市
  • 実行委員会、月1~2回
  • ワークショップ、月1回
  • チーム活動(料理チーム、体験チーム、商品チーム、学びチーム)
  • チーム活動を、プル博(紀の川フルーツ体験のプルプル博)に繋げる。

第7回ぷる博の概要

  • 期間:令和5年2月26日~4月9日(43日間)
  • 体験催し:毎日10~20カ所で、「飲食・販売」、「調理・クラフト体験」、「アクティビティ」の事業が行われており非常ににぎわっている。

事業成果

  • フルーツ・ツーリズム研究会が法人化された。
  • フルーツ・ツーリズム研究会の活動を通して培った知識・経験を活かし、フルーツをテーマにした活動を法人の事業になるよう展開。活動資金を確保しながら、社員7名、理事6名で、「フルーツのまち紀の川市」の魅力を継続的に発信する。

「フルーツエール事業(はっさくプロジェクト等)」の取り組みについて

視察先の状況

  • 令和2年、流通過程で規格外品として廃棄されるフルーツを汎用性の高い加工品(果汁・ダイス・粉末)へ製造できる企業を誘致すべく活動を開始すらが、いまだに誘致は出来ていない。
  • 令和2年10月。東洋大学の研究で、はっさくの外皮に、熱中症対策に有効とされるオーラプテンが含まれているとの事ことで、熱中症被害の社会的課題解決と、廃棄処分しなければならない外皮の有効活用としての商品開発をスタートした。
  • 令和2年12月。東洋大学と包括連携協定を結ぶ。
  • 東洋大学、株式会社土屋商店と「地域産業創出に向けた連携協定」締結し熱中症対策商品開発を目指す
  • はっさくエールの販売へ動き出す。
  • 令和3年9月、令和4年8月、泉佐野市との連携事業で「もものエール」を発売
  • 令和3年12月、泉佐野市の工場で製造された「はっさくエール」を発売。材料のみ供給
  • 販売は市の商工労働課で、市内の酒屋、直販店、道の駅から注文を取り、330cc入りの瓶を単価55円で2,700本ほど販売していた。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:市内の酒販店、道の駅の直売所でのみ販売しているとのことだが、売れるのか。
  • 回答:新聞などメディアに取上げられたこともあり、現在は完売している店舗が多い。酒販店の努力が重要である。
  • 質問:年一回ワンロットは今後も変える予定はないのか。
  • 回答:市は、利益を求めていないため、今後もワンロットで売切れた時点で終了する。
  • 質問:利益率は6割ぐらい必要だと思うが、2割で良いのか。
  • 回答:特段、そのような声は聞いていない。このビールをきっかけに新規のお客を獲得できている。

須坂市にどう生かせるか

「紀の川フルーツ・ツーリズム」は同じようなフルーツ王国の市として、生産農業者、販売店、寿司店、パン屋、ケーキ屋、クラフトショップ、ハングライダー体験等いろいろな職種の方が参加して、市民のみならず、県外の方が多く来られていろんな事の体験を通して、ふれあい、食し、購入し、大盛況なようです。須坂市も研究し取り入れていく事は大変重要な事例と思われた。

「はっさくエールプロジェクト」は始めたばかりで、生産量等も少なく事業で収益を上げる目的でなく、はっさくのPR程度で、あまり参考にならないと考えています。

この記事に関するお問い合わせ先

議会事務局
所在地:〒382-8511 長野県須坂市大字須坂1528番地の1
電話番号:026-248-9014 ファックス:026-248-3365
お問い合わせフォーム
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください
このページで分かりにくい部分はありましたか
このページにはどのようにアクセスしましたか
このページは見つけやすかったですか