2022年度行政視察報告 経済建設委員会

更新日:2024年03月26日

ページID: 1079

視察日程:2022年7月27日(水曜日)から7月29日(金曜日)まで

視察者:水越正和委員長、牧重信副委員長、荒井敏、竹内勉、中島義浩、霜田剛

視察地:青森県黒石市、岩手県紫波町、岩手県遠野市

1 青森県黒石市【重要伝統的建造物群保存地区を活かしたまちづくりについて】

選定理由

当市は明治から昭和初期に製糸業が栄え、商家をはじめとした土蔵造りの建物が今もなお点在しており、現在、伝統的建造物群保存地区保存条例を制定し、国の重要伝統的建造物群保存地区(以下:「重伝建」という。)の選定を目指していることから、参考とすべく視察先とした。

視察先の状況

市の概要

  • 人口:31,706人(2022年7月末時点)
  • 世帯:13,898世帯(2022年7月末時点)
  • 面積:213.40平方メートル

黒石市重要伝統的建造物群保存地区について

  • 地区名:黒石市中町
  • 面積:3.1ヘクタール
  • 条例制定:2003年度(平成15年度)黒石市歴史的景観保存条例
  • 国選定:2005年(平成17年)7月22日
  • 選定基準:(一)伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
  • 種別:商家町
  • 建物等:伝統的建造物46件、工作物5件、環境物件10件

選定に至るまでの経緯

  • 高度経済成長による国土開発と都市化が急激に進んだことにより、自然環境や歴史的環境の破壊が問題となり、昭和50年文化財保護法が改正され、伝統的建造物群が文化財の種別に加わり、歴史的町並みの保存整備の取組が、全国各地で展開された。
  • 黒石市は、昭和58年伝統的建造物群保存調査報告書を作成したが、この時には伝健制度が住民に理解されておらず、指定には至らなかった。この当時、担当者の理解不足もあったと推測されている。
  • 報告書作成と同時期に市民意識調査を行った結果「こみせ(注釈) は共同利用空間である。」、「こみせは自分のものであって自分のものではない。」という意識が確認でき、こみせは所有者のものであるが利用については共同のものであるという市全体の合意が存在していた。
  • 「こみせ」や「こみせ通り」の伝統的な景観を保存し、魅力ある黒石を作ること、閑古鳥が鳴いていた町の観光資源として大きな力にしようという動きがあり、指定に繋がった。

(注釈) 青森県や秋田県では、建物の表通りに設けられたひさしを「こみせ」と呼んでいる。
同様のものが、新潟県などでは「雁木」と呼ばれ、地方によって呼び名が違う。
こみせの空間は、積雪時の貴重な歩行通路となることから、降雪地帯で維持されてきたと考えられている。

今後の課題等について

  • 国の防災計画見直しで文化財の保護も厳しくなったため、防災設備等の経費が掛かる。
  • 人口減少で空き家が増加したことから建物の改修等、重伝建指定地区をどう維持していくかが今後の課題となっている。

質疑応答(抜粋)

  • 質問:重伝建の指定で様々な国の支援があるが、住民が関心を持っていたことは。
  • 回答:修景に要する経費の9割補助や固定資産税の減免を中心に説明してきた。消火器設置に要する経費は市で補助を実施した。
  • 質問:重伝建指定地区内の一般住宅も固定資産税が減免されるのか。
  • 回答:把握できていない。勉強させていただきたい。
  • 質問:「松の湯交流館」は、買上げを含め3億円の経費が掛かったとのことだが、国の補助と市の負担はどのぐらいか。
  • 回答:重伝建に指定されると国の9割補助を受けられるが、所有者が市となると5割となる。市の財政的に単年での修繕は難しいため、継続事業として実施した。

市への提言

現在は、住民によって守られている重伝建保存地区だが、今後の高齢化社会、少子化社会により、相続等が困難な状況となり、空き家となる懸念があります。
そのような状況になれば、重伝建保存地区の維持が難しくなることが推察されます。
黒石市の視察で、住民と行政との関わりが大切であり、観光名所のみならず、このエリアに住んでもらうことを考えていくことが大切だと感じました。
当市は、選定に向けて準備を進めているところでありますが、将来的な展望も見据えて計画的に遂行していただきたいと思います。

2 岩手県紫波町【公民連携による都市整備事業「オガールプロジェクト」について】

選定理由

公民連携による都市整備を成功させ、町が活性化した先進地で、須坂市にも生かすことが出来るのではとして視察先とした。

視察先の状況

市の概要

紫波町は岩手県のほぼ中央に位置し、県庁所在地盛岡市の南16.7キロメートルにあり、電車で21分と通勤圏でもある。
古くから物流の拠点として賑わい、周辺の農村とともに反映し、リンゴ、ブドウ等の果樹生産地であり、全国屈指のもち米生産地でもある。
面積は238.98平方メートル、人口は33,124人で微増の状況で、地価も紫波中央駅前は少し上昇している。

「オガールプロジェクト」の経過

この都市整備計画は、平成10年に開業した、JR東北本線の古館駅と日詰駅の間の新駅紫波中央駅の乗降客確保目的から、数年間開発計画が進まず塩漬け状態であった10.7ヘクタールの駅前土地の開発を目的とし、当時の藤原前町長、岡崎事業部長を中心にして、東洋大学大学院と協定を結び、2007年(平成19年)にPPP(publicprivatepartnership)公民連携事業としてスタートした。

東洋大学大学院の公民連携PPPの定義

公共サービスの提供や地域経済の再生など何らかの政策目的を持つ事業が実施されるにあたって、官(地方自治体・国・公的機関等)と民(民間企業・NPO・市民等)が目的決定、施設建設・所有、事業運営、資金調達など何らかの役割を分担して行うこと。

事業経過

業経過一覧
平成21年2月 紫波町公民連携基本計画を作成し、町議会が3月議決
平成21年6月 オガール・デザイン会議を町の要綱で設置し、施設設計やデザインの調整を図る。有識者はオガール紫波株式会社の推薦に基づき町長が委嘱し開催
平成23年4月 岩手県フットボールセンター開設
平成25年10月 オガールタウン(住宅分譲地)分譲開始
平成24年6月 オガールプラザ(官民複合施設)開設。
図書館・交流館・子育て応援センター・産直・カフェ・居酒屋・歯科・眼科・学習塾等が入所
平成26年6月 エネルギーステーション(紫波グリーンエネルギー株式会社)事業開始
地域熱供給先:オガールベース、オガールタウン、紫波町役場庁舎、オガール保育園
熱源:木質チップ焚温水ボイラー(500キロワット)
平成27年7月 オガールベース(民間複合施設)ビジネスホテル(オガールイン)日本初のバレーボール専用体育館、コンビニ、薬局、料理屋、居酒屋、事務所
平成27年5月 紫波町役場庁舎開設
平成28年12月 オガールセンター(官民複合施設)開設
紫波町こどもセンター、小児科、病児保育室、アウトドアショップ、グランピング、ベーカリー、トレーニングジム、英会話教室、美容院、事務所
平成29年4月 オガール保育園(民間経営)開園

以上、多くの施設が開設され、オガールエリアの従業員数は301名(役場職員286名除く)です。

地域住民には、大変評判が良く、ここに来ればすべて間に合うと、常に賑わっており、大人、子ども、乳幼児と多くの住民が長時間滞在し、朝から晩まで、平日、休日に限らず。活気のあるエリアに変貌している。

質疑応答(注意:一部抜粋)

  • 質問:オガールプロジェクトの周辺に住宅地があるが元々、整備されていたのか。
  • 回答:元々、整備されたもの。新駅誘致のために整備された新興住宅地。
  • 質問:デザインが統一されているが建築家との関りは。
  • 回答:設計はそれぞれ違うが、デザインガイドラインに沿って建築されているため、高さ、色(和名の付く色のみ使用可能)など、統一感のあるように見えている。

須坂市への提言等

当市は、民間主導で須坂長野東インター周辺開発が進められており、2024年春にイオンモールが開業するが、施設に入る店舗や開発計画は、すべて民間任せであり、民間主導の開発計画を支援しているのみとなっている。
オガールプロジェクトように、官と民が共同で開発に連携する事業は、住民の要望等も聞き入れることができるため、大変素晴らしいと思います。
しかし、それには、力強いリーダーシップを発揮できるリーダーの存在が欠かせないと思います。
今現在、当市に欠けているのは、そういった方が見当たらないことだと思います。当市はその様なリーダーを作り出すことが喫緊の課題と思います。

3岩手県遠野市【遠野ローカルベンチャー事業について】

選定理由

当市では、地域の交流とにぎわいを創出し、創業希望者への経営支援を行うことで産業振興及び地域活性化を目的とする拠点施設として、「須坂市賑わい創出拠点『やまじゅう』」と称し、指定管理者制度を導入して、運用しています。
遠野市では、この事業と類似しており、全国先駆けの取組を行っているため、視察先とした。

視察先の状況

市の概要

  • 人口:25,215人(2022年7月末時点)
  • 世帯:10,690世帯(2022年7月末時点)
  • 面積:825.97平方メートル

視察先の取組

少子高齢化による人材不足の解消や、移住・定住の促進、6次産業の活性化など、多くの可能性がある事業として2016年に株式会社ネクストコモンズと共に、地方での起業に意欲を持つ人を「地域おこし協力隊」として募集・委嘱し、中心市街地の空き店舗をリニューアルし、活動拠点の移住者等起業支援拠点施設(コモンズスペース)を開所する。
地元企業や生産者と連携しながら、ホップやどぶろく、歴史、文化など、遠野の人々が育んできた豊かな地域資源を活用した起業に向けてのサポート事業が始まった。

事業の実績

遠野醸造(クラフトビール製造・販売・飲食店)設立、BrewGood(ビールの里プロデュース会社)設立。ホップ農家、どぶろく蔵人、特産品開発など、遠野市に移住・定着している。 地域おこし協力隊員の定着63.6パーセント(22名中14名)、新規創業8件、空き店舗・空き家活用11件、市内人口増45人、中心市街地への民間投資額6,000万円となっている。

質疑応答(注意:一部抜粋)

  • 質問:この事業だけでは、株式会社ネクストコモンズの利益は上がらないと思うが、他にどのような事業をしているのか。
  • 回答:全国で当市と同じような事業を実施している。また、カフェ、コワーキング、ゲストハウス、シェアハウスの運営や内閣府の委託事業も実施している。
  • 質問:仮申込みで多くの応募があったとのことだが、なぜ10名まで絞ったのか。
  • 回答:当時、起業型地域おこし協力隊のニーズがあったため、大勢の方の応募があった。本気度と熱意のある方に実施してほしいということ、また、限られた予算内で実施する必要があったことから、人数を10名まで絞った。
  • 質問:定着率が63.6パーセントと高い数字だが、株式会社ネクストコモンズの支援が良いのか。
  • 回答:支援もあるが、隊員が遠野市の地域課題を考えて行動している結果だと考えている。採用については、冷やかしで応募する者もいることから、厳選な審査をしたと伺っている。また、優秀すぎて採用しなかった者もいると聞いている。
  • 質問:起業の資金調達をクラウドファンディングで行ったとのことだが、行政が介入したのか。
  • 回答:単独で実施したもので、行政では介入していない。
  • 質問:クラフトビールは値段も高く、売上の面で苦慮すると思うが如何か。
  • 回答:大量生産、販路拡大はせず、遠野市に訪れた方をターゲットにしている。飲食店による提供が多い。その他、遠野駅等で販売している。販路拡大などはしていないので、コロナ禍でもダメージは低い。

須坂市への提言等

合同会社U.I.internationalが指定管理者となり「須坂市賑わい創出拠点『やまじゅう』」が9月21日にオープンしました。『やまじゅう』は、「まるごと博物館構想」を核とした「人」・「地域資源」で紡ぎだす「まちの元気創出事業」により、「総合的休憩所・地域交流拠点」としての役割を果たすことになります。
『やまじゅう』では、1.飲食店の運営、2.賑わいを生み出す新規店舗出店支援、ビジネスコンサルティングとして経営・営業RR支援、3.町中の公園・憩いの場、イベント会場として活用、4.観光客ガイドなどの事業を進めます。
今、このエリアは重伝建保存地区選定に向けての取組も進められていますが、『やまじゅう』、「まるごと博物館構想」、「わざわざ店」、「地域おこし協力隊」、「商店街」、「商工会議所」、そして「市」がスクラムを組み「町中の賑わい」を作ることが必要になっています。そのために「遠野ローカルベンチャー事業」を参考にしていくことが大切と考えています。

この記事に関するお問い合わせ先

議会事務局
所在地:〒382-8511 長野県須坂市大字須坂1528番地の1
電話番号:026-248-9014 ファックス:026-248-3365
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