2026年度行政視察報告 福祉環境委員会
視察日程:2026年5月26日(火曜日)から28日(木曜日)まで
視察者:山崎永一 議員(委員長)、霜田剛 議員(副委員長)、西脇隆 議員、宮本泰也 議員、竹内勉 議員、浅井洋子議員
執行部:高齢者福祉課係長
視察地:佐賀県小城市、福岡県筑後市、福岡県福岡市
1.佐賀県小城市「小城市生活支援体制整備事業について」
選定理由
小城市では、平成29年に「介護予防と地域づくり勉強会」を、市全体ではなく、市内の町ごとに開催。各地域特有の課題やニーズに対して、その地域の住民自らがアイデアを出すなかで「第1層協議体」「第2層協議体」という2層の会議体を発足させた。第2層協議体では各地域の具体的な課題やニーズをその地域の住民同士が協議し、第1層協議体では市内全体を対象として医療、介護・福祉、町づくりなどの団体関係者が地域資源やニーズなどの情報交換、第2層協議体の支援を行う。第2層協議体のなかで、高齢者に向けた買い物やゴミ出しなどの生活支援のニーズが意見として出され、具体的な制度設計が検討されるなか、事業の事務局役として平成31年4月に小城市社会福祉協議会に「小城市支えあいセンター」が設立され、以降、小城市支えあいセンターを事務局、地域住民を利用者・支援提供者(ボランティア)として「生活支援体制整備事業」がスタートした。
須坂市にも一部地区に同様の生活支援サービス事業があるが、全市的な生活支援体制の整備について、参考とするため選定した。
視察の状況
市の概要
- 人口:43,761人(2026.3.31)
- 世帯数:17,927世帯
- 面積:95.81平方キロメートル
- 議員定数 :16人
- 一般会計:256.5億円
経過等
- 平成28年度 介護予防と地域づくり勉強会の開催・・・町ごとで話をしたらどうだろう・・・
- 平成29年度 町ごと勉強会の開催 第2層協議体の発足
- 平成30年度 困りごとアンケートの実施
- 令和元年度 小城市支えあいセンター設立。センターを事務局として住民ボランティアの活動スタート。買い物支援、ゴミ出し支援の開始
- 令和2年度 コロナ禍の活動自粛を経て、活動再開。付き添い支援の試行スタート~現在 支えあいセンターの利用が年々増加中
視察先の概要
- 利用対象者:一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯の方(事前に支えあいセンターに利用者登録)
- ボランティア:有志の地域住民(事前に支えあいセンターにボランティア登録)
- 支援内容:ゴミ出し支援(利用者自宅より集積所までのゴミ運搬)、買い物支援(利用者より購入希望品を伺い買い物代行)、付き添い支援(ボランティアの車での通院や買い物送迎、付き添い)など
- 利用料金:10分ごとに100円
- オペレーション:支援を希望する利用者は電話で支えあいセンターへ依頼。支えあいセンターの担当者が支援可能なボランティアをマッチング。支援実施後は、利用者から直接ボランティアへ利用料を支払い
利用状況
- 利用者登録は202名、毎年20-30人の純増。ボランティア登録は75名、70代を中心に1番若い方は22才、最高齢は90才。数値はいずれも令和7年度末
- 支援実施数は令和7年度1年間で1,957件(ゴミ出し784件、買い物314件、付き添い854件、その他5件)
- 令和7年度より市内6つの社会福祉法人にも通院支援に参画してもらっている
課題・今後の展望など
- 自身も高齢となりボランティアを引退される方がいる一方、若い方がなかなか入ってこない→地域のふれあいサロンでボランティアのリクルート(地域で困っている人を助けてみませんか?という感じで)、市内の大学での説明会開催、福祉法人以外の事業者への参画呼びかけ、などを実施
- ボランティアの業務負担軽減→以前は利用者が購入したチケットで利用料を支払っていたが、ボランティアの換金業務が負担となっていたため現金払いに変更
- 安全性など支援の質の担保→社協によるボランティア養成講座の実施、OD検査(運転適性検査)の実施など
- 現在は通院、買い物等に限っている付き添い支援に対し「お墓参り」や「集いの場」への送迎希望があるが、タクシー会社など民業圧迫につながってしまうため、線引きをしてお断りしている
財源構成
- 国の地域支援事業補助(訪問型サービス支援)を活用・・・令和7年度の交付は465万円、一般財源による負担はなし
- 支援センターにおける事務員1名分の人件費、付き添い支援のための自動車にかける保険、その他備品代などを賄っている
本事業による効果
- 数値的な評価はあまりできていないものの、利用者にとっては「事業のおかげで高齢者の在宅生活が継続できている」「普段人との関わりがない方たちが、きちんと身なりを整えたり、人と会話するなどで生活の質が保てている」
- ボランティア側からも「誰かのためになることが生活の張り合いにもつながっている」との声が聞かれる
質疑応答(抜粋)
- 質問:マッチングについて
- 回答:市内一括で登録。電話で予約を受け付け、できるだけ、近所の登録ボランティアから当たる。定期的な利用もあるが、そうした定期的な利用については毎週予約電話は不要。出来るだけ固定化されるようにしている。ボランティアへの連絡はLINEで、忘れないように、また、行き違い防止のため出来るだけ文字で残す。女性の利用者には女性など、性別などの希望にもなるべく対応する。
- 質問:成功事例について
- 回答:一人暮らしの高齢女性、夫の他界後、親族とも疎遠になり、住宅がゴミ屋敷化した。登録してもらい近所のボランティアが通い、ゴミ出しを開始。当初、ゴミはないと言って、出してくれなかったが、だんだんごみを出すようになりゴミ屋敷が解消された。
- 質問:本事業により生活の質はどのような変化がみられるか。
- 回答:付き添い支援などで外出の機会の増加、また人とかかわることで、介護予防、重度化予防に効果があると思うが、効果を数値で計測したものは今のところない。
須坂市の現状と提言
須坂市では、令和4年度にこの事業と近い「旭ヶ丘生活たすけ合いの会」が旭ヶ丘地区でスタートした。これまでの議会の答弁でも、この仕組みを全市的に広げていきたいという展望は示されているものの、現状としてはなかなか進まない状況となっている。
小城市が全市的に事業実施できている要因としては、給与が発生する「仕事」として事務局業務(とくにマッチング)の専任者を設置できていることが大きいと感じる。旭ヶ丘地区の事例ではマッチングに関する部分もボランティア(有償ではあるものの)となっており、事業拡大のボトルネックになっているとも感じる。
全市的に広げていくうえでは、事務局業務はボランティアではなく仕事として制度設計・予算確立をしていくという考えも必要で、活用できる国の補助金制度なども担当課でも研究していくべきと考える。
2.福岡県筑後市 「図書館事業について」
選定理由
県内で最も小さな図書館でありながら、生活(くらし)とともにある図書館をコンセプトに、貸し出し冊数を3倍に増やしたほか、地域の課題解決きっかけづくり事業として、庁内連携、ボランティアと連携し、子ども若者・壮年者・高齢者まで支援、様々な事業を手掛ける。
貸し出し冊数の大幅な増加の経緯・方策、ユニークな図書館運営(本de恋活、図書館で認知症かふぇ、図書館de体力チェック、図書館でストレッチ、ガチャ本、読み聞かせ活動、お話会、雑誌スポンサー制度、雑誌付録プレゼント、ブックスタート)の目的、実施方法、予算の確保、成果など、参考とするため選定した。
視察先の状況
人口:48,755人(2026.3.31)
世帯数:21,508世帯
面積:41.78平方キロメートル
議員定数:17人
一般会計:259.7億円
視察概要
(筑後市立図書館の特徴)
コンセプト…生活(くらし)とともにある図書館
公立図書館の位置づけ:社会教育施設⇒社会「共育」施設
- 共に育つとは、市民の成長、一人一人の課題解決、司書の成長を通じて自己実現。スキルアップした市民が協力すれば地域力の底上げ(成長)⇒地域活性化につながる。図書館はそもそも税金の還元率が高い
- 地域に愛され地域とともに成長する図書館
サービスの成果が見えにくいからこそ、地域の課題解決のきっかけを作るために、庁内の他課と連携することで行政や市民にとって必要とされる図書館を目指す。 - 筑後市立図書館の特徴
職員体制:12名図、書館管理運営事業費:6,300万円。貸出冊数が10万冊から35万冊に増。
図書館学の5法則を基にサービス展開をしている。図書館は成長する有機体が方針。
子供から若者・壮年者・高齢者まで支援、地域密着、家族利用、複合型文化施設群の一角。インターネット予約は75パーセントに及び、移動図書館は改造軽自動車1台50冊から700冊搭載可能。団体登録制度あり(160~180団体)絵本コーナーの充実、手作り感いっぱいの図書館。 - 地域の課題解決きっかけづくり事業(図書館の特色ある取組)
庁内連携事業(図書館でストレッチ、健康度チェック、図書館で糖尿病講座、高血圧講座、図書館で気軽に体力アンドフレイルチェック、図書館で認知症カフェ、移動図書館としょま~る号など) - 筑後市立図書館の充実したボランテイア
大勢のボランティアによる読み聞かせ、ブックスタート、本の修理、書架の整理など。
イベントによっては30人ほどのボランテイアの協力がある。
コロナ禍においても健康づくり課(コロナ対策本部拠点)と話し合い、ブックスター事業が実施できる形を模索して密を避けるため場所を区分けして感染対策をして実施した。宅配サービス等の利用促進にもつながる。 - 雑誌スポンサー制度
2012年雑誌スポンサー制度が開始。徐々に雑誌が増えていった⇒寒い時期で利用者が減る2月に恒例のイベント「雑誌付録プレゼントを実施」。5冊に1枚応募券を配布。月間貸出冊数が1万冊以上増加。
(注目点)
- スポンサー指定先の巡回貸し出し、雑誌スポンサーへの年間報告が継続につながっている。
- 行政側にボランテイアが楽しく活動が実施できるような気遣いと対応が重要。
- イベント・講演者の選定は利用者・市民の投票で決定、新規利用者の掘り起こし目的になる。
- 雑誌付録プレゼントは利用者に大人気とのこと。
- 図書館の事業が新聞等に掲載されると市民の認知度が高まり褒められる。
- 図書館の様々な事業は経営会議で企画書に基づいて採択され決定される。
- 市役所の他部門との連携し、地域の課題解決のきっかけかけづくり事業はなぜ利用者が多いのか、図書館は利用しやすい=敷居が低い、誰でも気軽にこられる。
須坂市への提言等
多種多様で、他部署の事業だろうと思われる事業までも行なう原動力は現館長の見識と行動力に他ならない。館長はじめ職員全員がパートタイムであることも驚くが、係わる職員の努力がうかがわれる。須坂市においても、雑誌スポンサー制度や雑誌付録プレゼント、企画書を経営会議に上げる方式など参考に出来ることも多いと思われる。いずれにしても、市民に親しまれ、足を運んでいただける図書館を目指し、貸出図書数の増加に結びつけていける必要がある。
質疑応答(抜粋)
- 質問:須坂市ではブックスタートで3か月検診で本を配っているのみだが…。
- 回答:本の配布だけでは本当のブックスタート事業とは言えない。健診の際に1組の親子に対しボランティア一人が読み聞かせを行う。検診や離乳食講座などの合間にマンツーマンで読み聞かせを行う。筑後市ではボランティアに謝礼もなく、本当のボランティア、気持ちで行っていただいている。本のプレゼント、利用カードプレゼント、なおかつマンツーマンの読み聞かせを行う。20年ほど続いている。
- 質問:インターネット予約は職員が大変ではないか。
- 回答:大変だけどそこを頑張るのが図書館員だと認識している。
- 質問:図書館運営の発想などについて
- 回答:図書館を必要としていない市民の層にもいかに浸透させていくか。いつでも、どこでも、誰でも利用でき、利用者を選ばない公平なサービスを展開する。潜在利用者は多く、そうした人へのアプローチをいかにするか。そのため児童や特定の大人向けだけでなく、赤ちゃんから高齢者まで公平に事業を展開している。いろいろな人とつながって、課題が見えてくる。読み聞かせについても館長になったころは、してあげている感が満載だった。館長就任後様々なことを実施して、職員からは嫌われたこともあるが、その先には市民がいると言い続けることで浸透した。5年くらいかかった。職員にはボランティアを楽しくできるための舞台を作るということを伝えている。
- 質問:貸し出し冊数は20冊と多い理由は。
- 回答:絵本を借りるお母さんたちが多いから。子供のサービスを考えている。
3.福岡県福岡市(福岡市認知症フレンドリーセンター)「認知症フレンドリーシティについて」
選定理由
福岡市では、人生100年時代を見据え、誰もが心身ともに健康で自分らしく生きていける個人の幸せと、持続可能な社会を両立できる健寿社会のモデルをつくるプロジェクト「福岡100」を、産学官民“オール福岡”で推進している。そのひとつとして、認知症の人やその家族がいきいきと暮らせる認知症にやさしいまち、「認知症フレンドリーシティ」を目指している。認知症にやさしいまちは、市民のみなさんが安心して暮らせるまちです。
視察先の状況
人口:1,671,835人(2026年4月1日)
世帯数:908,191世帯
面積:343.47平方キロメートル
議員定数:38人
一般会計:11,318億円
視察概要
(認知症フレンドリーセンターとは)
認知症になっても住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らせるまちを目指す「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」の拠点施設として、2023年9月にオープン。認知症フレンドリーセンターは、認知症であってもなくても、誰でも利用できる場所です。認知症のことを学んだり、認知症の人の体験をしたり、認知症について相談したり、認知症の人が働いたり、みんなと交流したり・・・今、認知症の方も、ご自身のまわりに認知症の知人がいる方も、これから認知症になるかもしれないと感じている方もこの福岡で安心して暮らしていける まちづくりの拠点として様々な活動を行っている。
(ユマニチュードの取組)
認知症コミュニケーション・ケア技法「ユマニチュード」は、「あなたのことを大切い思っています」という気持ちを、相手が理解できるように表現することを目的とした1つの技法。全ての市民がケアに参加するまちを目指して、「実践する人」「学びたい人」「知りたい人」のフェーズに応じた講座を展開。「国境なきユマニチュード推進本部」2025年9月1日福岡市に創設。共生社会の実現するための「認知症基本法」が2024年1月試行…認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるよう施策を総合的に推進する。
(認知症の人にもやさしいデザイン)
認知症の人へのヒアリングや英国の大学の評価制度等を参考に策定。
ポイントは「コントラスト」「文字とピクトグラムの併記」コントラストを設けたり、サインの見やすさや配置などに工夫を加えることで不安や戸惑いを軽減し、誰にとっても居心地の良い空間になるよう配慮されている。
(その他)
講座の開催
全小学校(146校)、全中学校(72校)、全公民館(153館)で一世講座実施。その他、申込制による出前講座でも随時実施。
目指しているのはフレンドリーシティであって、サポートシティではない。自分らしく暮らすにはできること、やりたいことが可能な限り続けられること。認知症の人も顧客であり従業員であり、地域の一員であり、社会の一員⇒認知症の人も活躍する街を産学官民オール福岡で目指している。
センター内の視察、VR技術を用いて、認知症当事者の視覚や世界観を疑似体験、当事者が日常で直面している困難や不安を直接「自分ごと」として理解し、適切な寄り添い方を学ぶ。
須坂市に活かしたいこと
- ユマニチュードの考え方を取り入れ、認知症サポーター養成講座を工夫していく。
- 若年性認知症支援コーディネーターの配置、「認知症家族のつどい」「認知症カフェ」の運営の工夫。
- 活動支援、認知症の人の声を施策に反させる方法等 認知症の人にもやさしいデザイン「文字とピクトグラムの併記」等。
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更新日:2026年09月15日