2025年度行政視察報告 福祉環境委員会
視察日程:2025年11月12日(水曜日)から14日(金曜日)まで
視察者:山崎永一 議員(委員長)、霜田剛 議員(副委員長)、西脇隆 議員、宮本泰也 議員、竹内勉 議員、浅井洋子議員
執行部:健康福祉部長
視察地:広島県竹原市、山口県周南市、岡山県倉敷市
1.広島県竹原市「歴史的建造物の活用について」
選定理由
須坂市では、保存を目的に昨年重要伝統的建造物群に選定されたが、先進事例である竹原市の当初から現在までの経緯や中長期的整備活用事例を学び、今後の投資の計画策定や活用にいかすため。さらに現在、当市では選定直後で住民組織はない状況であり、住民組織の必要性や意義についての検討に資するため選定した。
視察の状況
市の概要
- 人口:22,205人(2025年8月31日)
- 世帯数:11,833世帯
- 面積:118.23平方キロメートル
- 議員定数 :16人
- 一般会計:154.8億円
特徴
- 北から南に横断する賀茂川の下流域で入浜式塩田が有名。冬は酒造りも盛んになり、町人文化が花開き発展を遂げた。
- 瀬戸内海の水際から寺山に広がる地形上の町屋街で特に三間の妻入り町屋の割合が高いが、様々な時代の建物がありながら、調和を保っている。竹原市歴史的風致維持向上計画による重点地区を定め、重伝建の周囲地区も整備を図っている。
経過等
- 竹原を北から南へ縦断し瀬戸内海へと流れる賀茂川の下流域で入浜式塩田を開発。
- 昭和40年 「竹原の家並みと古民家」(竹原市観光協会)
- 昭和40年代~50年代 研究者やマスコミが注目。住民が古い町並みの価値や保存の必要性を認識。
- 昭和53年~54年 伝統的建造物群調査。
- 昭和56年 竹原市伝統的建造物群保存地区保存条例
- 昭和57年 竹原市竹原地区伝統的建造物群保存地区を指定
- 重要伝統的建造物群保存地区に選定(12月16日)
視察先の概要
北前船の寄港地として、さらに製塩業や酒造業で栄えた街のこと、歴史的風致維持向上計画や保存、住民組織の活動内容や歴史・文化ツーリズムなどの説明を受けた。建物を活用した宿泊や店舗活用の事例等、また、住民組織の目的や活動の変遷など世代交代時の課題等を調査した。安芸の小京都と呼ばれているように特定物件の密度が高い町並み、本瓦瓦葺き、塗屋造り、塗込格子、駒あて、犬矢来などの特徴が保存されている。
活用事例として、小学生対象の竹原歴史体験講座を開催してワークショップとして、ちびっ子大工さん(保存修理体験)を行う。
市所有の施設は街並み保存地区とその周辺に8件大規模な建造物や文化財的な価値が高い建物が多く、維持管理にかかるコストが大きいことが課題ともいえる。
歴史的資源を生かしたまちづくりとしては、従来の活用方法は建造物の保存を優先し、狭い範囲内に公開施設、資料館が4件だったが、活用方法を見直し、保存と活用の2本柱として市の直営施設として民間の創意工夫を導入。国交省主催のサウンディングに参加。民間活用のための社会実験を令和3年度から4年度にかけて行った。歴史的建造物でのマルシェなど。
今後の須坂に
保存と活用が重要と考えられる。竹原市は保存地区の特定物件の密度も高く、いかにも空き家や廃屋と感じられるものが少ない。須坂市では、一般物件であっても集計事業を進めるとともに空き家を少なくする方法を模索するべきで、まさに空き家の活用事業の重要性を感じる。重伝建に選定された当時の竹原地区には住民組織が3つあったが、現在は統一され、おもてなしに重点を置いた活動が行われている。
- おもてなし・観光連携:軒先の一輪挿し飾り
- 伝統行事などへの協力:竹祭り、たけはら竹灯り
- 空き家調査・歴史的建造物の維持・活用
- 防火訓練、消火器の無料配布など。
質疑応答(抜粋)
- 質問:改修・活用にあたっての助成制度や支援策はどのようになっているか。
- 回答:修理修景事業の補助金及びまちなかにぎわい創業支援事業による補助金。共用は可能。
- 質問:特定物件のうち、(1)店舗等(兼用の場合は店舗として)と(2)住居と(3)その他の件数や、割合について。また40年前と比較してどう変化しているか。
- 回答:統計資料はないが、基本的には住居(兼用)。空き家を補助金を活用して店舗に変わった事例もあり、近年は店舗が増えてきている。
- 質問:保存地区が地域全体のまちづくり・経済活性化にどのように寄与していると感じるか。
- 回答:竹原の製塩業の歴史背景、歴史文化を象徴するものとしての位置づけ。令和6年度の街並みエリアへの入込は32万人以上。竹原市の観光入込全体の4割以上。
- 質問:保存・活用にかかる維持費や補助金制度など、財政的な負担や課題はあるか。
- 回答:補助金は上限600万円の50パーセント。制定当初は年間10件程度あったが、最近の補助は年間2件程度。市所有の建造物は大きな建物が多く、維持費が大規模になる。一般的にこうした木造建物は、30年に一度は大規模な維持修理、100年に一度は骨組みにまで及ぶ根本修理が必要。
重伝建地区を現地視察する様子
2.山口県周南市 「回天記念館管理運営・人間魚雷「回天」の歴史と平和の尊さを伝える について」
視察先の状況
人口:133,544人(2025年8月31日)
世帯数:67,788世帯
面積:656.29平方キロメートル
議員定数:30人
一般会計:805.9億円
視察概要
回天記念館は、戦争の悲惨さ、命の尊さ、平和の大切さを学ぶ平和学習施設で、回天搭乗員の遺書や遺品などの展示物や、記念館周辺に残る回天訓練基地などの遺構を見学し、搭乗員の大切な人達への想い、基地での生活や出撃するときの気持ちなどを感じ、命の大切さや平和の尊さについて考えることが、平和学習施設としての役割と認識されている。
回天に関する誤った情報や、改ざんされた遺書・遺文等の流布が見受けられる中、回天関係者をはじめ戦争経験者の高齢化、減少が進む中、史実やご本人が遺されたものを若い世代に正しく伝えることが施設の新たな役割となっている。
平和学習・歴史教育について
- 回天記念館設立の経過
- 太平洋戦争末期に開発された人間魚雷「回天」搭乗員の遺書・遺品、関連資料など展示し、平和の尊さと命の大切さについて考える平和学習施設として、昭和40年から建設資金を集める活動が開始され、昭和43年に完成・開館された。その後、拡張・周辺整備を行い、平成10年にリニューアルした。
展示について
- 館内を7つのセクションに区切る。
- 「激動の時代の中で」「祖国を救うために」「基地での生活」「出撃」「戦後社会と回天」「新たな時代に向かって」「平和を願う回天のこころ」
- 回天のレプリカの展示;全長14.75m、直径1m、燃料は灯油、一旦停止や後退、エンジン停止などの機能はない。試運転での事故が多発し、15名が亡くなっている。
- 回天が突入する際、艦の側面に直角にぶつかれば、信管が作動するが、浅い角度では作動せず衝突の衝撃で搭乗員の体が前のめりになることで、自爆する仕組み。
「回天」を取り巻く歴史的背景
- 昭和19年2月 黒木博司中尉が仁科関夫少尉とともに「必死の作戦」として提案された。
- 同年7月試作機完成、8月に「回天」と命名 幕末の「回天」(天を回らし戦局を逆転する)
- 搭乗員数:1,375人の志願の内、106人が亡くなる。平均年齢20.9歳 そのほか整備員や基地員など39人亡、また、作戦を行う海域まで回天を運ぶ潜水艦8隻が未帰還でその乗務員を加えると戦死者は全部で956人となるとのこと。
- 戦果;米軍資料によると沈没3隻、損傷4隻
視察しての感想
- 回天記念館のみならず回天運搬用トンネル、回天昇降クレーン基礎や基地プラットホームなど関連施設も見学でき、平和学習に最適施設と思った。
視察の成果とまとめ
- 学校教育の平和教育に活用している。(令和7年11月7日までに市内小学校10校、中学校2校、高校1校のほか市外2校、県外3校の高校の修学旅行で来館)
- 「戦後80年周南市」として副市長をトップとした庁内プロジェクトチームにおいて、全庁的に取り組んでいる。令和6年4月から文化振興に観光部門を編入し、文化スポーツ観光部として各種施策を進めている。
- 写真展(市役所、徳山駅中央図書館など)
- 資料展(「戦中・戦後のくらし」「映像記録上映会」民俗資料館)
- 講演会(徳山空襲と戦後復興に関する講演会)
- 戦争関連図書紹介・貸出
- 歴史探訪ウオーク
- 回天記念館夏休み親子教室
- 各施設において施設見学(戦争の悲惨さ、平和の尊さ、命の大切さ、戦災復興の歴史に触れる機会の提供)等々
- 令和7年に文化芸術振興プランを策定し、文化観光の推進として、平和学習の機会提供及びピースツーリズムの推進に力を入れている。観光ボランティアガイド27団体、447人程度所属とのこと。
- 回天記念館での平和発信の取組など、本市ならではの文化資源について、地域づくりや地域経済へ貢献するよう文化資源の発掘やデジタル技術の活用、多彩な文化資源を活用した「文化観光」の推進
- 周南市観光ボランティアガイドと連携した情報発信の推進
- 市長は平和教育を「自分事としてとらえること」との言葉は極めて重要だ。
須坂市への提言等
戦中派が少なくなり、実体験を語る人が減少する中で、次世代への平和教育が重要と考える。そのため、須坂市として市全体のプロジェクトとして全庁的に平和教育を行うべき。
質疑応答(抜粋)
- 質問:回天記念館では、特攻兵器「回天」に関する歴史をどのような視点で伝えているか。
- 回答:条例では、より、「回天に係る資料を収集し、保存し、及び展示し、広く世界の恒久平和に寄与することを目的に…」とある。人間性探求、平和学習の施設ととらえている。
- 質問:戦争を知らない世代、特に若い世代に戦争の悲惨さや平和の尊さを伝える工夫は。
- 回答:当時の搭乗員の肉声を公開するなど実感しやすい施設となるようにしている。
- 質問:地域振興、観光資源としての位置づけや経済効果は。
- 回答:広島原爆資料館と連携したピースツーリズムが30回近く開催され、ボランティアガイドとも連携する。
- 質問:戦争を知らない世代、特に若い世代に戦争の悲惨さや平和の尊さをどのように伝える工夫など
- 回答:実感しやすい展示
映画「出口のない海」で使用された操縦席カットモデルの活用
収蔵資料を紹介するデジタルミュージアムシステムを導入
搭乗員が生前記録した肉声の再生装置の設置
証言映像の解説を分かりやすい表現に修正
特設サイトを通じた情報発信
団体見学者等に対する講話
3.岡山県倉敷市 「手話言語条例について」
選定理由
須坂市でも3月議会に制定が予定される中、条例を制定して終わりではなく、より実効性のあるものとするため、先進地視察を行った。岡山県は全国で初めて全ての市町村で条例が制定された県で、倉敷市では、条例制定に際し市民や手話団体の意見を反映し、中でも条例前文では、条例に対する強い想いが込められている。また制定後も幅広く普及に向けた取組を行う事例を調査する。
手話言語条例とは
- 手話言語条例とは、手話が言語であるという認識が、広く市民に理解され普及することで、障害者の権利を保障し、障がいのあるなしにかかわらず、共に支えあい、いきいきと暮らせる地域社会を目指すことを目的としていて、条例制定する自治体は増えている。
視察先の状況
人口:471,550人(2025年8月31日)
世帯数:222,618世帯
面積:643.7平方キロメートル
議員定数:38人
一般会計:2,119.8億円
須坂市の状況など
条例制定の目的
- 手話が言語であるという認識が、広く市民に理解され普及することで、障害者の権利を保障し、障がいのあるなしにかかわらず、共に支えあい、いきいきと暮らせる地域社会を目指す
長野県内の条例制定状況
- 長野県は、手話言語条例を2016年3月22日施行
- 県内市町村では、視察時点で佐久市・上田市・塩尻市・軽井沢町・小諸市・長野市・千曲市が制定済
須坂市の現状と課題
- 身体障害者手帳(聴覚)取得者数 121人(2024年度末現在)
- 全国手話言語市区長会に加盟(2016年~)
- 全国の自治体の手話関連の施策などの情報交換などを行うために加盟した。
- 須坂市聴覚障害者協会と須坂市長との懇談会を開催
- 2023年度には、協会から手話言語条例の制定について要望書が提出された。
- 条例制定の先進事例を視察
- 2024年度に、須坂市聴覚障害者協会と須坂市福祉課が、小諸市の条例制定の進め方について視察研修を実施した。
課題
- 市民の手話について関心が低い
- 「須坂市地域福祉計画市民アンケートの結果」(2024年度)、手話についての関心についての問いに、「関心がない・どちらかといえば関心がない」と回答したした方が、50.5パーセントと半数以上あった。
- 手話奉仕員養成講座の参加者数が減少傾向
- 2023年度14人、2024年度7人、2025年度6人
須坂市の手話言語の普及に関する取組み
- 手話奉仕員養成講座手話通訳者派遣事業
- 目で聴くテレビ「アイ・ドラゴン」の導入
- 須坂市総合防災訓練の協働実施
- 町別人権問題学習会
- 須坂図書館の「りんごの棚」で手話言語の特集
- 9月23日は手話言語の国際デー&手話の日
- 2025年11月16日(日曜日)「ぼくが生きてる、ふたつの世界」須坂市上映会の開催
質疑応答(抜粋)
- 質問:手話言語条例制定までの経緯。
- 回答:かねてから手話言語条例制定について議論を行っていたが、近隣他市町の制定状況やコロナ禍での聴覚に障がいのある方に対するコミュニケーション支援の必要性が高まったことで、倉敷市手話言語条例制定に向けた取組がスタートした。
- 質問:条例制定に向けて
- 回答:倉敷市聴覚障碍者協会と計4回の意見交換会を実施倉敷市手話言語条例(案)が令和3年12月議会で議決された。
- 質問:倉敷市手話言語条例とは。
- 回答:手話に対する理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的事項を定めることにより、全ての市民が共生することのできる地域社会の実現を目的(手話は言語である)
- 質問:制定後の取組は。
- 回答:広報用のチラシやリーフレット、市のホームページ等を活用して、条例の広報を行う。市民課前の大型モニターへ、条例制定を掲載。ホームページに「きらきらコーナー」と題し、手話に関する話題や手話を学べる動画を毎月更新。該当月のホームページ上の記事とQRコードを掲載。ラジオを通じたPR。小学生福祉読本「みんなのふくし」での条例紹介。また、市職員を対象に研修、学習会を行う。市民向け講座「はじめての手話講座」。
- 質問:条例の内容、特徴などについて。
- 回答:モデル条例を参考にしてはいるが、制定に際し、団体との意見交換会を開催し、出来るだけ意見を取り入れる形で策定した。特に市の条例では珍しい条例前文については深く検討した。前文及び第3条までは市が検討した内容となっており、第4条以降はおおむねモデル条例の形式となっている。
- 質問:職員研修の受講状況。
- 回答:例年20人前後、会計年度任用職員が多い。
須坂市にいかせること等
条例制定後の取組として、情報発信と広報活動の強化として広報誌やホームページを活用し、条例の趣旨や手話に関する情報発信。手話に関する出前講座の実施を事業者向け啓発活動とする。条例制定が終わりではなく、実効性を伴う取組を進める。
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更新日:2026年02月03日