平成31年度視察報告書 福祉環境委員会
視察日程:令和元年5月14日(火曜日)~16日(木曜日)
視察員:堀内章一委員長、久保田克彦副委員長、牧重信、宮本泰也、酒井和裕、浅井洋子
視察地:兵庫県尼崎市、福岡県みやま市、岡山県津山市
1.兵庫県尼崎市「介護予防に向けた住民参加型事業等について」
選定理由
おいしく食べよう健口教室事業、いきいき健康づくり事業、高齢者ふれあいサロン運営費補助事業など、介護予防に向けた住民参加型の事業として先進的な取り組みを行っており、須坂市の参考とすべく視察先とした。
視察地の状況
高齢化率:27.5%
介護認定率:21%
近隣の大阪市に引っ張られて認定率は高い傾向
市の取組み方針
「介護を要する状態にさせない、重度化させない」
施策
- 身体機能の測定・評価
- 身体機能の低下予防
- 運動の継続支援
- 仲間づくりによる運動の促進
- 栄養・口腔機能の低下予防
- 身体機能の重度化予防
- 認知機能の低下予防
- 認知機能の重度化予防
- 介護予防情報の発信
- 介護予防の学習機会講座
- 仲間で取り組む介護予防環境づくりの各事業について事務事業シートを作成、PDCAサイクルの検証を行う
各事業と教室について
- 「運動・栄養・社会参加」を一体的に取り組む仕組みをパッケージ化し、『ためしてガッテン』でも取り上げられた。
- 「おいしく食べよう健口教室」
平成29年度から開始。バランスの良い食事を、しっかり噛んで食べる高齢者を増やすことを目指している。拠点型(定期講座)と出前型(出前講座)の2つの講座形式で実施。 - 「いきいき健康づくり事業」
配付された貯筋通帳に歩数を記録し、1日1万歩を限度に、100万歩以上達成した市民に記念品(帽子・ウィンドブレーカー等)を贈呈。 - 「ふれあいサロン運営費補助事業」
週1回以上のサロンの開催等を要件として、自主的に地域で活動するグループの交流活動や介護予防活動に対し補助を行う。(一般介護予防事業)
高知市発祥のいきいき百歳体操(おもりバンドをつけて音楽にあわせて座ったまま体操する)を取り入れている。
質疑応答
- 質問:今後各事業をどのような形に持っていくのか
- 回答:全国的に介護予防が大事となったのは最近(平27年頃から)の話で、住民主体が大事。百歳体操をベースにしていく。以前はサロンの場所を貸すだけだったが、それではおしゃべりして帰るだけで飽きられる。フレイル予防では口腔と栄養が大事。
現状、介護認定が下がるとがっかりする、3から4に上がるとありがとうと言われる、そういった感覚を改善していきたい。 - 質問:健康づくり推進員について
- 回答:ボランティアであり、区役員からの選出ではない。委嘱期間2年で講座のサポート役。養成期間は5回程度の講座を受講させる。総数290名。食、運動、口の健康。推進員が独立してくれることが理想だが、そこまでいっていないことが課題。
- 質問:栄養口腔機能低下予防事業について
- 回答:低予算、人海戦術でやっている。
- 質問:いきいき健康づくり事業について
- 回答:「いきいき100万歩運動」登録者目標数7,800人であるが最終的には1万人を超えたい。ウォーキングコースマップを作成、市内は車が多く危ないため、歩きやすい道の案内にも役立っている。
- 質問:高齢者ふれあいサロン推進運営費補助金について
- 回答:市内に106か所。個人宅はない。住民のリーダーづくりの場として「元気づくり工房」を考えている。
須坂市への提言等
「ウォーキングシティすざか」と称し力を入れているが、全体的に市民の意欲を喚起する尼崎市の取り組みや、ふれあいサロンへの運営補助を検討すべきである。
2.福岡県みやま市「生ごみ減量化及びバイオマス産業都市構想について」
選定理由
須坂市では生ごみはすべて焼却しているが、福岡県みやま市では生ごみは焼却せずに資源化している。
また、住民の意識変化と協力により、大きな費用対効果を出せるよう生ごみ減量化およびバイオマス産業都市構想に努力しており、このような点を重視して選定した。
視察地の状況
経過等
- バイオマスセンター整備のきっかけは、2011年東日本大震災に伴う原子力発電所の事故で、再生可能エネルギー導入を模索した結果、「生ごみ汚泥系メタン発酵発電を利用した資源循環プロジェクト」を選定。
- 九州発のみやま市バイオマス産業都市構想を策定した。
- 平成25年度から「生ごみ収集モデル事業」「液肥散布モデル事業」を開始。
- 生ごみが集まらないと事業が始まらないので、近隣で10年前から同様の事業を行っている大木町のバイオマスセンター事業を参考とし実験を始めた。
- 生ごみ分別説明会では、市内に150ある自治会を対象とし、2名1組体制で6班に分かれ、200か所で開催した。広報だけでは伝わらない。 分別により可燃ごみの4割を占める厨芥類の割合を抑制することで、隣接する柳川市と共同建設予定の焼却場の建設費が抑制されること、焼却灰埋立場が長く利用できる、ごみ処理の経費が下がる等の効果が見込まれると説明した。
- 生ごみは月曜日・木曜日、火曜日・金曜日、水曜日・土曜日の3パターンで回収。
- 10世帯に1個生ごみ収集桶を設置。
- 分別バケツは、当初分は無料で配付。
- バイオマスセンターで製造される液肥「みのるん」は、法律上「普通肥料」となり、田、竹林、レンコン畑等に散布。
- 紙おむつは多分に水分を含んでいるので、紙おむつ資源化プロジェクト事業で水溶化処理し、再生パルプとして耐火ボードなどの建築資材に再利用している。出生届の際、紙おむつ袋をプレゼントしている。
質疑応答
- 質問:生ごみ分別開始前の事前説明会等の開催状況について。
- 回答:平成29年2月から平成29年12月まで。みやま市内150行政区を対象に、計200回程度実施。
- 質問:家庭からの排出方法について、バケツは無料配付したのか。回収桶は何世帯単位か、回収桶の回収頻度は週何回か。回収桶の設置場所の基準、回収桶周辺の臭気に関する苦情はあるか。
- 回答:桶は10世帯に1個、週2回収集で月曜日・木曜日、火曜日・金曜日、水曜日・土曜日の3パターン。設置基準は通学路や交差点等交通の妨げにならない場所。臭気の苦情は今のところなし。
- 質問:収集方法について、直営か、民間委託か。
- 回答:指定袋による燃やすごみを民間委託している収集業者は4社。
- 質問:施設について、「ルフラン」の意味は。
- 回答:「ルフラン」はフランス語で「詩や音楽など同じ句で曲節を繰り返す」という意味。ネーミングを公募したところ、現在は廃棄物として処理されている生ごみなどを資源として再度活用する、循環のまちづくりの拠点としての施設という意味で秋田県の方が命名。
- 質問:施設の稼働予定年数、運営は直営か委託か、何人体制か、運営費用はいくらか。
- 回答:予定年数は20年、運営はプロポーザルによる民間委託で14人体制。運営費用は最初の2年半(2018年12月~2022年3月)は2億3千万円。
- 質問:施設周辺の臭気は、液肥は有料か。どう搬出して、受入先はどこか。全て肥料として使用されているか(液肥が過剰生産ではないか)、発電した電気は公共施設へ提供か、売電か。
- 回答:施設周辺の臭気は微生物、薬品と活性炭によって施設内の脱臭を行い、周辺の生活環境を守っている。液肥は無料配布。液肥散布車による農地への散布は10アールあたり1,080円と液肥運搬車1台540円。各校区設置の500リットルの液肥タンクは無料で配布されており、家庭菜園等に利用されていて、すべて肥料として使用されている。発電した電気は、全体の6割程度だがバイオマスセンター施設内の電力に使用している。
- 質問:施設開設前までの市の体制はどのようになっていたか。生ごみを焼却せず資源化したことにより費用対効果は。
- 回答:センター開設前の生ごみは燃やすごみとして焼却処理していた。費用対効果は今後の課題でもあるが、事前の調査では生ごみを分別する方がしないより年間1.7億円程度削減される試算が出ている。
- 質問:事業開始後の住民の意見は。
- 回答:事業開始前、生ごみ収集モデル事業を4年間で1,102世帯の住民の協力で行った。「燃やすごみが減って良かった」「犬猫の食いあらしがなく、生ごみの汁もこぼれず衛生的で良かった」等の意見をもらっているが、夏場は臭気や小ハエ等の意見が考えられる。
- 質問:液肥について
- 回答:足りないくらい。ドブのような匂いがする。
- 質問:ごみ袋について
- 回答:燃やすごみ(大袋)は10枚入で300円だったが、450円に値上げ。逆にプラスチック袋は150円を50円に値下げしている。分別やリサイクルが報われるような設定にした。
須坂市への提言等
みやま市の資源循環の構想として、バイオマスセンターの位置づけはよく理解できた。
須坂市では、産業構造が複雑な環境条件にあり、行政単独で進めるには厳しいと考える。生ごみの活用方法をさらに考察する必要がある。

福岡県みやま市バイオマスセンター「ルフラン」
3.岡山県津山市「介護予防に向けた住民参加型事業等について」
選定理由
津山市の一般介護予防事業「めざせ元気!こけないからだ講座」は、町内会を単位とした住民組織が週一回、自主的に取り組んでおり、先進的な事例で須坂市の参考とすべく、視察先とした。
視察先の状況
介護保険の基本理念
尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要な保健医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うことにある。
- 介護保険制度はサービスの利用自体が目的ではなく、自立する「手段」としてサービスの利用がある。
- 老齢により、できることが少なくなると、できないだろうと諦める。何もしなくなる、周囲も何もさせなくなる。
サービスを利用することで、老化認知症の進行という負のループから、できることが少しずつ増えていく。できることがもっとあるはずと自信につながり、諦めていたことをもう一度やろうという意欲が出る。
老化認知症の進行防止という維持・向上のループにもっていくことが大変重要である。 - 本年度4月からの通所サービス型総合事業の方向性として「自分らしく自立した生活を送りたい」を応援。具体的には基本チェックリストの活用と専門家の助言による利用によるエリア判定や通所サービス利用フローチャートの活用。短期集中型の元気いきいき通所サービスでは、地域での社会参加や自己実現、利用者の目標達成に向けての応援など。
安本作業療法士からの説明
- 高知市発祥の「いきいき百歳体操」を参考にしている。
- 100グラム単位で調節可能なおもりを付けて童謡を歌いながら、基本的な動作を繰り返しゆっくりと体操するもので、3ヶ月間週一回のペースで高齢者の足腰や肩の筋肉を鍛える
- 転倒しない(こけない)で行動できることを目指した運動プログラムによる「めざせ元気!!こけないからだ講座事業」を実施。
- 5年後、10年後の居場所づくり、だが行政からは金を出さない。ノウハウだけ。上からの押し付けはだめ、続かない。
- 市内の自治会は365あり、大きくて700~800人、小さいところで30~40人。
- 介護予防は西高東低の傾向があり、北海道はほとんど取り組んでいない。本年7月19、20日の日程で長野県箕輪町で講演を予定している。須坂市の作業療法士も参加してみてはどうでしょう。
- 住民主体・自主的参加がキーワード。保健事業と介護事業との連携が大事。週一回の運動で介護費が抑制される統計あり。認知症も3割低くなる可能性がある。
- 本事業は市民約4,000人が取り組んでおり、年間述べ10万人を超える。
- 通いの場支援で重要なことは、住民の体と心、周りの人との関わりである。
90歳のおばあさんの動画視聴
週に1回3ヶ月継続することで杖をつかなくなった。
加齢に伴って弱る筋肉は決まっている。おもりの体操で筋力を維持し、地域の人と話すことで認知症やうつの予防、地域から見守ってもらえる安心感。
事業効果として期待するところは、財政効果にどれだけ寄与できるか。なぜ続くのか、自分が元気だと周りが元気、さらに地域が元気に。集会所がきれいになるという効果も出た。
やらせるのではなくやるを引き出すこと。自己選択、自己責任、自己決定の共有。
ベトナムからも視察が来た。
認定率が高いことが必ずしも虚弱者が多いということではない。
質疑応答
- 質問:体操について
- 回答:高齢介護課でおもりを斡旋、貸与している。初級編は1.3キログラム、中級編は2.6キログラム。
参加者から以前と全く変わらないとの感想をもらったが、変わらないことが大きな効果である。
地域支援事業の中で実施しており参加者は女性が8割。おもりをつければ男性も参加しやすくなるのではないか。手を挙げた地域で説明をして、やらないといった地域は1ヶ所だけであったが、10年後結局その地域もやった。行政は種まきだけする。
介護認定はおまもりという人がいる。人が持っていたら自分も持ちたいという考え、ここが課題。
須坂市への提言等
高齢者が転倒しないで行動できることを目指して、調整可能なおもりを付けて足腰や肩の筋肉を鍛える3カ月運動プログラムであった。
さらに10年余の歴史があり、現在では210の地域(市内の57%)、4千人余(高齢者の8人に1人)が体操に取り組んでいる。
また、新年度から総合事業の見直しを行い、要支援者に対して基本チェックリストと地域 ケア会議で、3段階の通所サービスに誘導している。
緩和型訪問サービスでは、生活支援コーデネーターと連携して百名を超えるサポーターが稼働している。
須坂市でも、老いても「こけないからだ講座」が生活圏で取り組まれ、地域づくりに繋がることが求められる。

「こけないからだ講座用」おもり
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更新日:2024年03月26日