2025年度行政視察報告 総務文教委員会
視察日程:2025年10月20日(月曜日)~10月21日(火曜日)
視察者:水越正和 議員(委員長)、久保田克彦 議員(副委員長)、浅野隆義 議員、野崎天馬 議員、荒井一彦 議員、荒井敏 議員、酒井和裕 議員
執行部:学校教育課長、財政課財政係長
視察地:埼玉県春日部市、千葉県銚子市
埼玉県春日部市 「義務教育学校(春日部市立江戸川小中学校)について」
選定理由
須坂市が進めている「須坂学園構想」は、今の中学校の場所を中心に、一つの小学校と中学校を学びの場として一体にした四つの学園を作る構想です。須坂学園構想基本方針を2026年9月までに策定する予定としているため、貴市立江戸川小中学校(義務教育学校)の開校に至る経緯や、6年余の学校運営の中での教訓や課題などについて教示いただき、今後の学校再編等の参考にするべく視察先とした。
須坂市の今後にとっての選択肢の一つとして視察しておくべき取り組みと考え選定いたしました。
視察先の状況
人口:228,928人(2025年9月末現在)
世帯:114,254世帯(2025年9月末現在)
面積:66.00平方キロメートル
議員定数:30人
2025年度一般会計(当初):933.3億円
義務教育学校 春日部市立江戸川小中学校の開校までの経緯
春日部市教育員会では、平成28年度に市域のうち旧庄和町北部地域における学校再編計画を策定した。この計画に基づき、令和元年度に該当地域内に存する宝珠花小学校、富多小学校の2つの小学校を統合し、同地域に存する江戸川中学校敷地内に統合した小学校を設置することにより、県内初の義務教育学校「江戸川小中学校」を開校した。
| 年月 | 概要 |
|---|---|
| 平成25年9月 | 「春日部小中一貫教育及び学校再編に関する基本方針」の策定、春日部市全体として学校再編に関する考え方をもとめたもの。 同年11月、市内すべての中学校区(13中学校)で基本方針に関する説明会の実施。 |
| 平成26年1月 | 「庄和北部地域学校検討協議会」が発足。地域住民による任意組織であり、教育委員会は立ち上げ及び活動を支援。庄和北部地域の児童生徒にとって望ましい教育環境や学校再編の必要性について検討。 同年5月「庄和北部地域のより良い学校教育環境に関する具申」を教育委員会提出。 |
| 平成28年4月 | 「庄和北部地域学校再編計画地域検討会」を教育委員会が設置。具申書の内容を踏まえて学校再編について、地域とともに検討。2校を統合し、江戸川中学校敷地内に施設一体型の義務教育学校を設置するとした「北部地域学校再編計画」を策定し、同年8月の教育委員会で議決。 |
| 平成28年9月 | 新学校に向けて、校名、校歌、校章、制服等について地域と意見交換。 |
| 平成30年9月 | 江戸川小中学校信仰者落成式典。 |
| 平成31年3月 | 宝珠花小学校、富多小学校、江戸川中学校 閉校。 |
| 平成31年4月 | 義務教育学校 江戸川小中学校 閉校。 |
須坂市への提言
地域が複式学級になることへの不安などから話し合いの場を要請し、教育委員会との複数回の話し合いを経てほぼ反対意見なく再編が進んだ。前提として、この地域には中学校残すことがあったので須坂市の問題とは少し違う部分もある。ただ、地域の合意なしでは進めていくことが難しいことも事実である。
「今まで」も大事なことはもっともだが、本当に考えるべきは「これから」。“子どもたちの教育環境を向上させるために”賛成、反対ではなく前向きな行動をとっていくことが重要である。
質疑応答(抜粋)
- 質問:教育活動の主な取組は。
- 回答:9か年を見通して5・6年生は教科担任制を実施している。早い段階から英語に親しませるため、1・2年生に「英語タイム」を導入している。異学年交流を大事にしているため、大運動会や持久走大会は縦割り団かつ戸津を実施。また音楽会も全学年参加で実施。小学校における中学校教員の乗り入れ授業を行っている。
- 質問:小学校の水泳授業はどのように行っているのか。
- 回答:中学生用のプールが深いことから市内のスイミングスクールに委託している。1・2年生、3・4年生、5・6年生の3つのグループに分け、バスを利用し片道20分ほど移動し実施している。水泳の実施には、時間割として2時間分が必要となるが、温水プールのため、特段学校運営等に支障はない。そのため、小学生に対応したプールの改造は行っていない。
- 質問:スクールバス等通学関係については。
- 回答:この学校は、市教委から小規模特認校の指定を受けており、事実上、春日部市内全域が通学区域になっている。統合前の旧宝珠花小学校区、旧富多小学校区の児童は、通学距離に関係なくすべてバスの利用対象とし、希望者のみバスを利用できる。それ以外の地区から通学する児童は保護者の送迎になる。中学生は自転車通学となっている。また、児童を送迎する保護者の車が多いため、校地内に乗り入れることから、グラウンドの縁に鉄板を敷き、スムーズに乗り入れができるよう対策をしている。
- 質問:教職員の負担感について、5・6年生の教科担任制において、後期課程(中学校)教員が、前期課程(小学校)の一部教科を受け持っているが負担感はないか。また、その分前期課程で教員の空き時間は増えるのか。
- 回答:江戸川小中学校規模(学年単学級)では、後期課程の教員が前期課程の授業を受け持ったとしても週の授業時数は17時間程度なので、負担感はありません。また、前期課程の教員も後期課程の教員と一緒に授業に立っている。空き時間が増えるというより手厚い授業が確立されている。
- 質問:小学校と中学校では、学校文化も違うので、それぞれの教員において苦労しているのではないか。
- 答:今は教員同士の協力体制も築け、問題は聞いていないが、はじめはぎくしゃく感があり大変であったと聞いている。
- 質問:小規模特認校の児童生徒の推移をみると減少しているように思うが、どのような理由でその学校を選んでいるのか。また市教委としては今後も残していく考えなのか。
- 回答:選んでいる理由は様々だが、小さくて自然豊かな学校、農村地域なのでクラス数も少なく生徒同士の人間関係等の関係で希望している。市としては需要がある限り今後も小規模特認校を残していく考えである。
- 質問:小6の卒業式、全校交流の取り組みはあるか。
- 回答:6年生での卒業式は行なっていない。全校を縦割り3グループにして活動している。6年生が中心となり前期課程の児童が異学年で活動している。
- 質問:授業時間の違う異学年での学校生活の工夫、課題はあるか。
- 回答:1〜4年生の朝活動の時間調整をし、2〜3時間目の間の休み時間を同じ時間にする。給食の時間調整し昼休みが同じになるようにする。チャイムの時間が異なる時は音量の調整をしている。
- 質問:教科担任制、教員の働き方など実践から得た教訓、課題はあるか。
- 回答:どの教員も持ち時間を同じぐらいにするため、1〜4年にも1部教科担任制を取り入れている。そのため複数パターンの時間割作成が必要。
2.千葉県銚子市 「銚子市緊急財政対策の取組について」
選定理由
銚子市は、人口減少と過大な事業負担による財政危機に直面しながらも、抜本的な行財政改革によって再建を進めている自治体である。今回の視察では、同市の財政再建の経緯と具体的な改革手法、組織運営上の課題や教訓を学び、今後の須坂市行政運営の参考にするべく視察先とした。
視察先の概要
人口:53,140人(2025年9月末現在)
世帯:26,663世帯(2025年9月末現在)
面積:84.20平方キロメートル
議員定数:18人
2025年度一般会計(当初):309.1億円
財政危機に至った背景
大規模事業による負担増
- 千葉科学大学、市立銚子高校、給食センターなど、相次ぐ大規模事業への費用負担により市債が急増した。特に大学誘致に伴う補助金見込みが想定通りに得られず、地域活性化の効果も限定的であった。
市立病院の経営難
- 市立病院の経営悪化により、指定管理者への繰り出し金が拡大。病院の赤字補填が財政全体を圧迫した。
人口減少と税収減
- ピーク時(1965年:9万1,492人)から大幅に減少し、現在は約半数にまで落ち込んでいる。市税収入の減少が財政基盤の弱体化を招いた。
財政再建に向けた取組
財政状況の公開と市民理解の促進
- 銚子市はまず、財政危機の実態を市民に正確に伝えることから始めた。財務分析や収支見通しを積極的に公開し、透明性を高めることで「共に再建する意識」を醸成した。
事業仕分けと見直し
- 5年間で7つの重点項目を設定し、103事業を対象に見直しを実施。
- 約15億円の効果を上げたが、達成率は36%。
- 実施困難な計画や既得権益など「しがらみ」による制約も存在した。
- 目的と費用対効果が見合わない事業を思い切って廃止・休止・統合へ
基金と借り入れによる財政調整
- 一時は財政調整基金残高が160万円まで減少したが、徹底した歳出削減と国のコロナ交付金上積みにより、約4億円まで回復した。財調の取り崩しを中心に、基金の用途変更の条例改正や、水道局からの借り入れ、金融機関からの借入によるやりくりで危機を乗り切り、その後は計画的な積立へ転換している。
人件費削減と組織改革
- 職員配置の転換、給与カットを実施(2019年より組合と交渉)。
- 行政内部の意識改革を促し、効率的な組織運営を推進。
単独補助金・現金給付の見直し
- 長寿祝い金などの現金給付を休止。
- 単独補助金の継続的な見直しを実施。
- 「やるものはやる、やらないものはいらない」を明確に打ち出した。
民間との連携・公民連携(PPP/PFI)
- 給食センター整備ではPFI方式も検討されたが、想定と実態の乖離が課題となった。公民連携を有効に活用するには、投資効率と長期的経費(ランニングコスト)の精査が不可欠であるとの認識が共有された。
課題と教訓
職員のモチベーション低下
- 財政逼迫により「お金がないからできない」という空気が蔓延し、職員のやる気や創意工夫が失われていった。この状態が続けば「前向きで考える職員」が育たないという危機意識が示された。
民意の見極め
- 「声の大きい市民」に引きずられず、真の民意を見極める姿勢が必要。費用対効果や目的の明確化を最優先し、政治的圧力に左右されない判断が求められる。
未来への投資と人材育成
- どれほど厳しい財政状況でも、教育・人材育成・デジタル化といった未来への投資を止めてはならない。「スクラップ&スクラップではなく、ビルド&スクラップ」であるべきと強調された。
再開ではなく再構築の考え方
- 一度廃止した事業は「復活」ではなく、社会状況を踏まえた「再構築」として位置づける。時代に合った目的と手法を新たに設計し直す姿勢が重要とされた。
質疑応答(抜粋)
- 質問:緊急財政対策を講じるに至った主な要因はどのようなことか。
- 回答:平成29年7月に「第7次銚子市行財政改革大綱」を策定し、行財政改革を進めていたが、平成30年度に入り、市税や地方交付税などの一般財源で約4億円の予算割れが見込まれ、収支不足が6億円にも及ぶ見通しとなり、財政調整基金を全額繰入れても赤字が生じるような状況に陥ったことに加え、このまま何も対策を講じなければ 赤字が累積し、近い将来、財政再生団体に転落する恐れがあったため。
- 質問:財政健全化団体への転落をどう回避し、危機を乗り越えてきたか。
- 回答:平成25年5月の「財政危機宣言」に始まり、3度にわたる「事業仕分け」「第七次銚子市行財政改革大綱」「緊急 改革プラン」「緊急財政対策」と、市民に我慢を強いるものも含めて行財政改革を推し進めた結果まだ十分な額ではないが、ある程度の貯金(財政調整基金)を確保することができた。ただし、新型コロナウイルス感染症発生時の国の財政措置や 令和2年度と令和3年度に本来であれば一般会計からの負担を避けることができない下水道事業会計への基準外の出資金5億1千万円を水道事業会計から下水道事業会計への貸付で対応したことなども、財政調整基金の増加に大きく寄与している。なお、令和6年度の実質単年度収支は2億8千万円の赤字となっており、依然として安定した財政運営には程遠い現状である。
- 質問:財政対策プランにおいて、とくに効果があったと考える施策は何か。
- 回答:事業仕分けで『不要・凍結』の市民判定が下された中でも、やめることのできなかった市単独で実施していた扶助費や補助金を休止する判断ができたことは、一定の成果があったと考える。
- 質問:財政対策により市民サービスにどのような影響が出たか。
- 回答:市単独の補助金や扶助費等の見直し・休止をはじめ、道路や公園の整備、イベントの休止など市民に我慢を強いる対策となり、不満もあった。また、「財政危機宣言」「緊急財政対策」を打ち出した際のハレーション、「市はお金がないから」というネガティブなイメージが 市内外に広まってしまったことが、人口の流出などにもつながっているのではないかとの指摘を市議会などからも受けている。
- 質問:人件費削減(職員数・給与等)について、どのような施策を実施したのか。
- 回答:「緊急財政対策」を講じる前から、職員の新規採用を最小限にとどめて職員数を抑制していた。さらに平成28年度から大幅な組織の見直しを実施しており平成30年度には部制から課制へ移行することで、管理職員数の抑制も図っていた。このような状況の中で職員に対しては、厳しい財政状況を全職員が理解し、職員一人ひとりが当事者意識を持って改革に取り組めるよう、情報の共有を図り、意識改革を図ってきた。しかし、一方で「お金がない」ことを言い訳に、職員が積極的に事業に取り組む姿勢を削いでしまったように感じている。
- 質問:財源手当ての乏しい大規模事業を短期間に集中して実施したことで、公債費等が大幅に増加したとありますが、投資前の財政見通しはどのように見込んでいたのか。何か特別な事情があったのか。
- 回答:「緊急財政対策」の冒頭に記載してある財源手当ての乏しい大規模事業(大学建設費助成、市立高校整備、給食センター整備)も、当初は補助金や 公債費への財源手当て (交付税措置)を見込むなどしていたが、実際には補助金も得られず、財源手当ての乏しい起債を発行する結果になった。
- 質問:財政改革の具体的な内容(項目)は財政課主導で選定したのか。担当課とのやり取りや進め方、市民への説明など、苦労した点をご教授ください。
- 回答:項目選定にあたっては、財政課で選定し「緊急財政対策」策定しました。職員への説明の場を設け市議会への説明の後、市民説明会を実施した。市民説明会では、かなり厳しい意見などもいただいたが、厳しい財政状況を乗り越えるため、子どもたちにツケを回さないため、「緊急財政対策」を実施した。
- 質問:財政調整基金もある程度(標準財政規模の10パーセント相当)確保されたことから、「緊急財政対策」を解除する考えはあるのか。また、その判断基準は。
- 回答:現状も非常に厳しい財政状況であると認識しており、一部(道路工事などの市民生活に影響が出るもの)を除き「緊急財政対策」で掲げた対策は継続していく考えである。一方で人口減少、少子化が進む中で、課題解決のための新たな施策に取り組む姿勢、未来への投資を進める姿勢を併せて示している。
須坂市への提言
事業の目的と効果の明確化
- 惰性で続く事業や成果の不明確な補助金について、定期的な効果検証を実施。
- 目的と費用対効果が乖離するものは勇気をもって見直す。
職員の挑戦を促す仕組みづくり
- 財政の厳しさの中でも、「できない理由」ではなく「できる方法」を考える職員を支える仕組みを構築。
- 職員提案制度や小規模実証(トライアル事業)などの導入も有効。
市民への説明責任の徹底
- 財政状況や施策の背景を正確に市民へ伝え、理解を得ながら改革を進める。
- 情報公開と双方向の対話により、「共に考えるまちづくり」を推進する。
まとめ
銚子市の財政再建は、単なる緊縮ではなく、「何を残し、何をやめるか」を明確にし、市民と行政が危機を共有したことに本質がある。
須坂市においても、財政運営を正直に開示し、市民と共に優先順位を定め、持続可能な行政運営へ転換していくことが重要である。
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更新日:2026年02月03日