2022年度行政視察報告 総務文教委員会
視察日程:2022年8月2日(火曜日)から8月4日(木曜日)まで
視察者:古家敏男委員長、堀内章一委員、浅井洋子委員、石合敬委員
視察地:北海道東川町、北海道旭川市、北海道千歳市
1 北海道東川町「ひがしかわ株主制度について」
選定理由
東川町のふるさと納税である「ひがしかわ株主制度」は、東川町を応援しようとする方が、東川町への投資(寄附)で「ひがしかわ株主」となり、共に町の未来を育んでいくことを趣旨に取り組んでいる。
全国に誇ることができるまちづくりを目指し、力強いサポートを願う施策を学ぶために視察先とした。
視察先の状況
- 人口:8,437人(2021年1月1日現在)
- 世帯:4,036世帯(2021年1月1日現在)
- 面積:247.30平方キロメートル
ひがしかわ株主制度の概要
東川町を応援しようとする方が、町ならではの事業に投資(寄附)することにより、東川町の株主となる制度で、ふるさと納税として税控除を受けることができる。
特典は返礼品のほか、町の様々な施設の優待利用や株主総会に参加できる(移住定住につながる方向性で企画している)。
寄附の対象事業については、町の既存事業にただ充当するのではなく、株主から共感が得られる事業に特化している。
寄附実績
寄附額は令和2年度が6億9千万円、令和3年度が9億5千万円、寄附者は道外が8割(主に首都圏)、道内が2割で、返礼品は主にお米、水、クラフトで、8割がお米を選ぶ。(町と農協の管轄が一緒なのでPRしやすいとのこと)
制度の課題及び今後の方向性
- 返礼品の8割がお米なので、どのように販売戦略を立ててお米に付加価値をつけるか。
- 株主に投資したいと思われる独創性のある事業をどうやって継続していくか。
- ふるさと納税がなくなったことを考え、どうやってECサイトでの直売を充実させていくか。
- 寄附者が主に首都圏なので、名古屋、近畿など西日本での認知度向上を図る。
- 株主総会については、参加者の満足度を向上させ、しっかり関係人口を構築し、移住定住につなげる。
質疑応答(一部抜粋)
- 質問:株主制度創設に至った経過は。
- 回答:ふるさと納税制度ができたときに職員で話し合い、返礼品だけをお返しすることはやめて、株主になっていただき、長くお付き合いができる仕組みをつくろうとなった。そして、できれば東川町に来ていただき、町を体験していただくメニューを入れていこうとなった。
- 質問:株主(寄附者)特典の利用実績は。
- 回答:株主証の発行は延べ9万枚(宿泊特典を利用した年間宿泊者は約20人程度)、令和元年度株主総会の参加者は道外から約50人(それ以降はコロナのため未実施)。
- 質問:株主(寄附者)とのその他関係人口創出施策は。
- 回答:月に2回ダイレクトメールをし、常に町のやっていることを伝えている。
須坂市への提言
ふるさと納税の本来の目的である地方への支援施策の思いを的確に捉えていると感じた。
この町の返礼品は、お米、ワイン等で目新しいものではないが、お米の売れ行きが良いので、返礼品にしなくても全て売れているとのことである。ふるさと納税の施策が終わった後もこの町の応援サポーターであり続けてもらえるため、株主と名称を付け、関りを強くしていく施策は、須坂市にも必要と強く感じた。
2 北海道旭川市「小中学校適正配置及び小中連携コミュニティ・スクールについて」
選定理由
須坂市では、小中学校適正規模等審議会を設置して、小中学校の適正な規模及び適正な配置の在り方について諮問している。
審議会では、2年間かけて学校の規模や学校の配置を中心に議論を深め、2023年度中に答申をまとめる予定になっている。
旭川市では、既に小中学校適正配置及び小中連携コミュニティ・スクールに取り組んでいるため、視察先とした。
視察先の状況
- 人口:331,397人(2021年1月1日現在)
- 世帯:177,937世帯(2021年1月1日現在)
- 面積:747.66平方キロメートル
小中学校適正配置及び小中連携コミュニティ・スクールの概要
小中学校適正配置
統廃合の状況
平成27~令和元年に5学級以下の小中学校11校について統廃合に取り組み、小学校3校と中学校1校を周辺の学校へ統合した。検討したが統廃合できなかった地域もあるが、検討を継続している。
通学区域の見直し及び変更
5校で通学区域の見直しを行った。現在まだ10校が複数の中学校に進学先が分かれている状況。通学区域の変更については、変更後も学校を選べるようにして欲しいとの要望もあるが、一定期間の経過措置(学校を選択できる)を設けることで、保護者や地域の理解を得ている。これまでは特段反対されることない。
適正規模について
小学校では文科省の基準と同じ12~18学級。中学校は、独自に下限を9学級として、適正規模校9~18学級(文科省の基準12~18学級)としている。6学級まで下限を下げてしまうと、教員配置数減により、教育指導面や学校運営面に影響が出る。
地域拠点校の存置
児童生徒の通学の負担や、地域の拠点として学校の役割の喪失等を考慮して、旧合併地域にいて拠点的役割をもつ学校を地域拠点校として存置している。
今後の統廃合
統廃合を進めると未利用の学校施設が出てくる。旭川市では廃校になり後利用の決まっていない学校が7校ある。総務部で全庁的な協議の場を設置して、廃校の利活用を検討している。
質疑応答(一部抜粋)
- 質問:小規模特認校がある地域の児童生徒については、小規模特認校以外への通学を認めているが、どの位の児童が希望しているか。もし、希望が多い場合、地域との協働に問題はないか。
- 回答:現在3校(小学校2、中学校1)を特認校に指定している。豊かな自然の中で教育を受けさせたいという保護者の希望に応じて、一定の条件のもとで通学区域外からの入学を認めている。
特認校の区域内の児童生徒は、小規模特認校がある地域に居住していることだけを理由とした指定校変更は認めていない。他地域の児童と同様に、保護者や家庭の事情がある場合のみ、指定校変更を認めている。
小規模特認校の富沢小学校は、地域の児童4人全員が冨沢小学校に通っている。旭川第5小学校は13人中7人が旭川第5小学校に通っている。地域の児童で旭川第5小学校に通っていない理由は、保護者の仕事の都合や放課後児童クラブに通わせたい、放課後面倒をみてくれる祖父母宅が地域外にあるからなど。桜岡中学校ででは、11人中1人が他校に通っている。
- 質問:遠方から小規模特認校に通学する場合の通学手段は。
- 回答:小規模特認校への区域外からの通学は、保護者の送迎を条件としている。そのためこれまでにスクールバスの要望はない。
- 質問:通学区を変更し、小学校と中学校の通学区が一致するよう計画しているが、住民の反応は。
- 回答:1つの小学校から全員同じ中学校に進学できるようになるので、地域の方も賛同している。特段に要望や意見はない。通学区域の変更時には、経過措置を設けて、数年は選択できるようにしている。例えば、兄弟で違う学校に行くことがないように配慮している。
- 質問:統廃合について地域や保護者への説明はどの程度やっているか。
- 回答:教育委員会と学校が一緒になって、対象校では年1回、保護者への説明と意見交換の場を設けている。統廃合に不安がある保護者がいれば、個別に丁寧に説明する機会も必要。保護者の意見がまとまらないと地域へ説明ができない。逆に保護者の理解をえていれば地域の理解が進むこともある。
- 質問:廃校舎の売却は検討しているか。
- 回答:市の基本的な方針は売却。しかし、大きすぎて買い手が見つからない。全国的には貸付が多い様子。無償なら借りたいという話もあるが、今の条例では民間に対しては有料貸付となる。東北地方の自治体では、対象事業を定めてその事業をやる場合は破格な値段での譲渡や改修費補助、運営費補助を出して、廃校の利活用を進めているところもある。旭川市でもそうしたことを含めて検討していく。
小中連携・一貫教育とコミュニティ・スクールの概要
平成26年準備期から、平成27~平成28小中連携推進期、平成29~令和元小中連携・一貫教育導入期、令和2~令和4小中連携・一貫教育推進期、令和5~令和7小中連携・一貫教育充実期に分けて計画を推進している。小中連携の充実しつつ、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)は平成30から、地域学校協働活動は令和3からスタートしている。現在、全ての学校で学校運営協議会の設置している。これに合わせて全ての学校で学校評議会は発展的に解消した。
質疑応答(一部抜粋)
- 質問:法に基づくコミュニティ・スクール(学校運営協議会)の設置状況と、市独自のコミュニティ・スクール(地域学校協働本部)の設置状況について。
- 回答:令和3年5月1日までに全ての小中学校で、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)を設置している。26の中学校区の内、9つの中学校区は小中合同で1つの学校運営協議会を設置している。
- 質問:学校運営に対して、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)からは、どのような意見があるか。
- 回答:学校運営協議会の協議事項としている、学校運営の基本的な方針についての承認や教委活動等についての意見や質問がある。
- 質問:学校運営協議会から教職員の採用等についての意見はあるか。
- 回答:教職員の採用等に関することは、デリケートな事項であるため、学校運営協議会の役割とせず、規則にも盛り込んでいない。
- 質問:地域学校協働本部として、学校支援の具体的な取り組みはどのようなものがあるか。
- 回答:保護者や地域住民と連携した学校支援の取り組みとして、地域住民が講師を務める授業(家庭科)や職場体験学習、登下校の見守り等が行われている。
- 質問:学校運営協議会と地域学校協働本部の役割の違いは何か。
- 回答:学校運営協議会は決定機関。地域学校協働本部は実働組織というイメージ。
- 質問:地域学校協働活動のモデル地域におけるコーディネータは、どのような方か。
- 回答:本来は地域の方が担うべきだが、現在は、社会教育部の職員で社会教育主事の免許を持っている職員が担っている。
須坂市への提言
小中学校適正配置において、小学校卒業後の進学先が複数の中学校にまたがることが無いように、小・中学校の通学区を一致させている。通学区域を変更する場合は適切な移行期間を設けている。須坂市の場合は通学区をどうするのか、参考にしたい。 特認校を存置して、隣接する通学区域の学校への入学を認めているが、須坂市ではスクールバスを運行して対応して、特認校は認めないのか。考える必要がある。保護者への説明は一人でも反対があると進まないので、合意を得ることが大切である。
3 北海道千歳市「防災学習センター・そなえーるについて」
選定理由
千歳市は様々な災害の疑似体験をしながら、防災に関する知識や災害が発生した時の行動を学ぶことができる施設「そなえーる」を2010年にオープンしており、防災講座や救急講習、自主防災組織の訓練など防災学習の拠点施設としも活用しているため、須坂市の防災施策の参考にするため視察先とした。
視察先の状況
- 人口:97,942人(2021年1月1日現在)
- 世帯:50,810世帯(2021年1月1日現在)
- 面積:594.50平方キロメートル
防災学習センター・そなえーるの概要
設置目的
市民(自主防災組織)、ボランティア、防災関係機関が連携し、防災学習や防災訓練等を実施することで、市民や防災関係機関の防災力を高めるとともに、防災関係機関に対する理解を深める。
- 整備面積 約8.4ヘクタール
- 総事業費 約21億円(防衛の民生安定事業 補助率75/100)
- 管理運営勤務人員 9名
- 施設内容
1階 小会議場、防災学習室、屋内訓練室
2階 災害学習コーナー、地震体験コーナー、通常体験コーナー、予防実験コーナー、防災情報検索コーナー、煙避難体験コーナー、避難器具体験コーナー
市民還元事項
- 展示コーナー通年開放
- 防災学習室、小会議室(防災に関しない会議)、屋内訓練室(スポーツ等に利用)を各種団体に17時以降に有料開放
- 屋外訓練広場(グラウンド)通常有料開放(冬季の積雪状態により雪山滑り台・歩くスキーコース等で市民に無料開放)
質疑応答(一部抜粋)
- 質問:施設の年間の管理費及び人件費は。
- 回答:人件費も含めて予算は3,300万円。
- 質問: 来館者の属性は。
- 回答:市内の小学生を中心に、中学生、高校生、町内会員など。また、道内外の視察も増えている。
- 質問: 施設の今後の課題について。
- 回答:展示施設や体験施設の利用だけでなく、多くの市民に防災学習や防災訓練などに参加いただき、自主防災組織や防災関係団体などと連携して、各種防災事業に取り組むとともに、防災面以外でも施設が活用できるよう工夫していく必要がある。また、施設は開設から12年目になることから、設備の更新が必要なため、多額の経費を要するので、予算の確保が大きな課題である。
須坂市への提言
この施設は自衛隊の基地が市内にあるため、国の補助事業によって成り立ったものである。
施設にある様々な体験コーナーは、大変貴重な経験を市民にもたらしている。須坂市では、なかなかこのような施設は持てないが、移動型体験車、簡易式組み立て施設などで体験する機会をもっと増やすべきと感じた。防災学習や防災展示は、いつ、どこの場所でも可能であるので、市民がより多く防災訓練や防災体験、防災学習をし、防災意識を向上させていくことが、災害に強い須坂市をつくっていくと考える。
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更新日:2024年03月26日