2023年度行政視察報告 総務文教委員会
視察日程:2023年5月22日(月曜日)~5月24日(水曜日)
視察者:牧重信議員(委員長)、山崎永一議員(副委員長)、早川航紀議員、久保田克彦議員、岡田宗之議員、水越正和議員、岩田修二議員
視察地:千葉県成田市、茨城県つくばみらい市、香川県高松市 サイテックアイ株式会社
1.千葉県成田市「小規模特認校 成田市立豊住小学校について」
選定理由
現在、須坂市では「小中学校適正規模等審議会」を設置して、小中学校の適正規模および適正な配置のあり方について諮問し、令和5年度内に答申をまとめる予定としているため、小規模特認校の状況を参考にするべく視察先とした。
視察先の状況
- 人口:130,809人(2023年2月末現在)
- 世帯:63,690世帯(2023年2月末現在)
- 面積:213.84平方キロメートル
小規模特認校 成田市立豊住小学校の概要
成田市は、平成18年に2つの自治体と合併し、小中学校を取り巻く大きな変化があった。小規模化と大規模化が同時に進行し、平成20年から学校適正配置方針を定め推進しており、現在は小学校が19校、中学校が8校で、2つの義務教育学校となっている。 豊住地域は農村地域で、児童の減少が続いているが、学校教育活動に大変協力的で、唯一の小学校に対する地域の期待も大きい。市教委は、地域に一つの学校を残すことを前提に小規模校の研究をすすめ、保護者アンケートに取り組む中で、令和3年4月に小規模特認校制度を導入している。
少人数ならではのきめ細かな指導や地域の特性を生かした活動など、特色ある教育を行い、希望者は市内全域からの入学を認め、この3年間で児童数は37人から41人、そして46人と増え、学区外から延べ13名が入学している。
今年度は3、4年生と5、6年生は複式学級で、そのための小規模学校支援教員(会計年度任用職員)とALTなど市独自で3名を配置している。特に、ALTの常勤で放課後の英語補修などにも対応し、英語検定や算数検定等を重視し、学習意欲の向上を図っている。 また、市内小規模校との合同校外学習や、ICTを生かして中学校区内の児童との交流も推進している。地域住民の「豊住の未来を考える会」も組織され、コミュニティスクール活動も行い、小学校の子どもたちと地区の合同運動会の開催など、小規模校のメリットを生かした魅力ある教育活動を進めている。
市教委の担当者からは、学区外からの就学を希望する場合の条件や、小規模特認校の児童数をどうするか、豊住学区の入学者数によっては学区外の希望者を調整するなど今後の課題だとの説明があった。
須坂市への提言
小規模特認校の実践と課題など、須坂市においても参考になる事例だと考える。豊住小学校は、フルセットの施設かとの問いに、数年前に大規模改修が完了しており、有効利用を図るとの回答があった。須坂市の小規模校における施設整備と学校教育をめぐる費用対効果に基づく対応など、成田市教育委員会からは微塵も出されなかった。
質疑応答(抜粋)
- 質問:市が目指す教育のあり方の中で、小規模特認校の位置づけは。
- 回答:本市においては児童生徒数の変動に伴い、平成19年度から地域に1つの学校を残すことを基本として、学校適正配置を進めてきましたが、令和3年度の義務教育学校「大栄みらい学園」の開校をもって、いったん適正配置は終了となりました。豊住地区においても平成21年度に豊住中学校が成田中学校と統合しましたが、適正配置計画にある地域に1校を残すことを基本としていたため、豊住小学校は存続することとなりました。しかし、豊住小学校の児童数が減少し、すべての学年が複式学級になる小規模化が著しく進展することが見込まれることから、学区外の地域からも通学することを認める「小規模特認校」とすることで、児童数を一定現数確保し、小規模化に歯止めをかけたいと考え、地域の皆様と協議をいたしました。小規模特認校として教育活動を展開するためには、小規模だからできる特色ある教育を展開することによって、その魅力を一層増大させ、子どもやその保護者の方に「学区内にある学校よりも豊住小学校に通ってみたい」という思いを強くもっていただけるよう、その教育内容を充実させています。
- 質問:特認校での複式学級の基準はどうなっていますか。
- 回答:国の基準に基づいて設置しています。1学年と隣接する学年との合計が8名以下、隣接する学年との合計が16名以下です。
- 質問:小規模特認校において、市単独の教員配置はどうなっていますか。
- 回答:今年度は3・4年生と5・6年生が複式学級になっております。5、6年生については、成田市の会計年度任用職員の小規模学校支援教員をサポートとして充てています。担任が作成した指導計画を基に支援教員が指導を行うことにより、学年ごとの指導をしています。また、回答LTを常駐し、英語学習に力を入れるとともに、放課後英会話教室を実施し、興味関心やコミュニケーション能力を高めています。
- 質問:豊住小学校の卒業児童の各中学校入学後の様子などは掌握できていますか。
- 回答:小規模特認校の事業が令和3年度にスタートしたため、卒業生はまだおりません。 豊住地区の中学生はバス通学ですので、バスルートの要望を含めて地域との意見交換はこまめに行っています。
- 質問:小規模特認校とした前と後とで、豊住小学校の児童数の変化はありますか。
- 回答:特認校制度で転入学した児童数は13名です。
内訳は、令和3年度は6名(1年3名、2年2名、4年1名)、令和4年度は6名(1年6名)、令和5年度は1名(1年1名)
- 質問:豊住小学校を小規模特認校にする前と後で、保護者や地域の反応はどうですか。
- 回答:統合前と、統合後2年目に検証のためのアンケートを実施しました。
統合前のアンケート
- 特認校にすることで学校が残るのはうれしい。
- 人数が増えることにより、人間関係が難しくなることで、今後の進学時の練習になってよい。
- いろいろな特色のある学校にできるのはよい。
- 人数が増えることのメリットが大きいと思う。
- 特認校制度を使ってきてくれる人たちがPTAなどの活動に協力してくれるのか。
- 親の行事への参加等、理解してもらえるのか不安。
統合後
- より一層特色のある学習方法を取り入れてほしい。
- 小規模だからこそできていることをもっとアピールしてほしい。
- 少人数の中で子供が自分の意見を発言したり、考えていることを発表したりする機会があるのでとてもよい。(特認校制度利用)
- 少人数で他学年とのかかわりも深く、個別で活躍できる場面がたくさんあってよい。(特認校制度利用)
- PTAのあり方については今後考えていかなくてはならない。会費を地区で集金しているが、特認校制度で通っている家庭はどこの地区にも割り振られていない状況である。
- 特認校制度利用の家庭にPTAの活動にもっと参加してほしい。
2.茨城県つくばみらい市「小学校の統合について」
選定理由
現在、須坂市では、小中学校適正規模等審議会を設置して、小中学校の適正規模および適正な配置のあり方について諮問し、令和5年度内に答申をまとめる予定としている。
つくばみらい市では、平成31年度に義務教育施設適正配置審議会による答申がなされ、令和2年および令和5年に統合により新たな小学校が3校開校した。統合に至るまでの課題等を参考にするべく視察先とした。
視察先の概要
- 人口:51,059人(2023年年4月1日現在)
- 世帯:21,070世帯(2023年年4月1日現在)
- 面積:79.16平方キロメートル
小学校統合の概要
つくばエクスプレス・みらい平駅周辺の「みらい平地区」においては、ニュータウンの形成とともに人口が増加傾向にあったものの、一方で周辺の「既存地区」においては人口の減少が続き平成20年より複式学級がいくつかの小学校で発生するようになり、地域間格差が問題となる。
その頃茨城県教育委員会では「小学校は12学級以上、中学校は9学級以上が望ましい」という独自の指針を示した。これを受けてつくばみらい市においても地域間のバランス是正と複式学級の解消に向けた「義務教育施設適正配置審議会」を設置した。
平成31年に審議会の答申がまとめられ、既存地区において令和2年には伊奈小学校(谷井田小と三島小が合併)と伊奈東小学校(板橋小と東小が合併)の2校が開校し、令和5年には谷和原小学校(谷原小と十和小が合併)が開校した。この結果、つくばみらい市内における複式学級は解消された。
なお、みらい平地区においてはこの間にも2校の小学校が新規開校するなど児童数は増加の一途であるが、既存地区では継続的に児童数は減少しており、今後も地域間の格差については注視していく必要がある。
質疑応答(抜粋)
- 質問:小学校の再編に伴い、小学校がなくなる地域も出てくると思われるが、地域の反応は。
- 回答:地域の活気がなくなるなど、小学校がなくなる地域においては反対の意見もあったが、複式学級の解消等まずは子どもにとっての学習環境を整えることを一番の優先事項として丁寧な住民説明会を行っていった。その過程で学校跡地の利用方法を示すことで理解が得られたと考えている(例:廃校となった旧小学校の施設に市立幼稚園を移転など)
- 質問:通学区の変更について地域や保護者の反応は。
- 回答:通学距離が長くなることについて心配する意見もあったが、統合した小学校にはすべてスクールバスを導入することで理解が得られた。その際に、通学距離が2.5キロメートル以上となる児童は利用対象となるよう市の独自基準(国の基準は4キロメートル)を設けた。
また地域からは安全対策についての意見も出されていた。これについては、バス停の位置を毎年度状況を見て検討したり、添乗員を必ず1名乗務させるなど行っている。
- 質問:統合によるメリット、デメリットをどのように考えますか。
- 回答:検証のため令和2年に開校した2校の児童・保護者・教職員にアンケートを実施。
児童に関しては伊奈小学校81.9パーセント、伊那東小学校65.9パーセントが統合について「良かった」または「どちらかと言えば良かった」と回答。知り合いが増えることをポジティブにとらえる記述が多くみられる。保護者に関しては、統合自体のメリット自体は強くは感じていないものの、否定する意見は少ない。教職員からは、多様な意見に触れることでの児童にとってのメリット、校務の分担・効率化が進むことによる教職員にとってのメリットが示された。
- 質問:ランニングコストの削減に効果はあったか。
- 回答:廃校となった施設に幼稚園を移動するなどした影響もありランニングコストは削減されていない。スクールバスの運行に年間約7,400万円かかっており、却ってその分コストは増えている。
須坂市への提言
今年度中に審議会からの答申が予定されるなか、再編に向けた検討が進んでいることに対して世間に対する周知がまだまだ十分ではないと感じる。
統合にあたっては、多くの意見も予想されることから、審議会で示している子どもにとっての学びのあり方を丁寧に周知していただきながら、もっと広く意見の吸い上げを行ってほしい。
また、つくばみらい市では担当課内に統合に関わる推進室を設け、審議会で示された2校統合にとどまらず、さらに4校の統合を進めるなど、将来的な児童減少に向けても積極的に動いている。
学校の再編にあたっては、須坂市でも長期的なビジョンを具体的に示し、専門的に取り組んで行くチームの設置が必要ではないかと感じた。
3.香川県高松市 サイテックアイ株式会社「地域通貨アプリについて」
選定理由
須坂市は、2023年度予算(400万円)で地域アプリを導入し、2024年度から2026年度までの3年間で普及、展開し(予算300万円)、2027年度からは財源をつけず自走することを計画している。
須坂市が導入するアプリを既に活用していて、既に成功事例があるサイテックアイ株式会社(香川県高松市)に、地域アプリの導入時から導入後の運用ノウハウについて学ぶため、視察先とした。
視察先の状況
- 人口:411,923人(2023年5月1日現在)
- 世帯:190,558世帯(2023年5月1日現在)
- 面積:375.41平方キロメートル
地域通貨アプリの概要
高松市で運用されている「マイデジ」には、基本サービスとして、14年前に紙媒体で始まった地域通貨「めぐりん」を電子通貨として使用できることをはじめ、地域情報をプッシュ通知する「お知らせ配信」、アンケート、地元電力会社とのポイント交換などの機能を搭載。新型コロナワクチン接種情報や健康診断情報を連携アプリにより登録、取得できる「とくとくマイヘルスケア」といったメニューもある。
他にも次のような取組みに対してポイント付与を行うことで地域活性を推進している。
- 商店街のお掃除ボランティア
- スマートフォンの歩数計と連動し歩いた歩数
- 地元スポーツチームの応援
- 企業の福利厚生
- 健康診断の受診
- 動物愛護(里親支援)
- 離島支援
地域通貨アプリの実績
2023年1月現在、アプリユーザーは約36,000人。カードユーザー(スーパーアプリ導入前の紙媒体の地域通貨)を含めると10万人以上が利用している。
対象店舗数は2022年時点で約4,000店舗。
地域通貨が使用できる店舗数は県内で約1,400店舗。
また「プレミアム付きデジタル商品券」の申込受付・発行を、「マイデジ」を通して行った。ユーザーが購入申込を済ませ、市内の指定の店舗で現金をチャージすると、10パーセントの金額を上乗せしたデジタル商品券がアプリ上で発行、更にマイナンバーカードを登録して、アプリ認証により高松市民であることが確認できれば、上乗せして10パーセントのプレミアムが付き、ポイント付与率は最大20パーセントとなる仕組みをアプリ内で実現した。
課題および今後の方向性(サイテックアイ株式会社)
- マイデジはお得に使えるお財布アプリだが、それ以外の本質的な価値や存在意義を感じてもらえていない。
- アプリサービス(道具)の提供だけでなく、地域産業を活性化させる取組み支援を行っていくのが目的。
- アプリサービスを使って将来どういった社会を目指していくか協議会を作り、ビジョンマップを策定し、日本で一番DXが進んだ地域「高松市」を実現したい。
- 交通データや購買データを活用し、またビジョンマップを策定し、スマートシティを実現していく。
参考
スマートシティたかまつ推進プラン 2022~2024(香川県高松市のサイト)
課題および今後の方向性
- マイデジはお得に使えるお財布アプリだが、それ以外の本質的な価値や存在意義を感じてもらえない
- サービス(アプリ)道具提供だけでなく、ビジョンマップを作る
質疑応答(一部抜粋)
- 質問:須坂市と同規模(人口約5万人)自治体の導入事例はあるのか。ある場合は成功した理由は。
- 回答:香川市の三豊市および観音寺市は商品券事業を実施。年度で1~2億円の商品券をプレミアム20パーセントで販売した。初年度は2週間くらいで売り切れた。2年目は数時間で売り切れた。アプリの導入者数は約1万人(人口の約20パーセント)。 自走させるために1万人の登録ユーザーを対象に、事業者が宣伝広告を有料で出せる仕組みづくりへ移行している。
- 質問:導入した自治体の地域アプリの運営事業体はどこが担っているのか。
- 回答:主に、自治体が自ら運営する、地域の商工会議所や商工団体が受託する、民間事業者が受託するといった3パターンがある。それぞれメリット、デメリットがあり、持続するためには地域に沿った運営方法を模索しなければならない。
- 質問:まず利用者にダウンロードしてもらう必要があるが、そのためのプロモーションはどういったものがあるか。
- 回答:一番良かったのは商品券事業。今までアナログでやっていたものをデジタルに変えますというのがダウンロードしやすい。アプリのダウンロードが増えてくるとアプリ内での情報発信、SNSでの情報発信、オウンドメディア(地域のお店や人を取材した内容等)の発行はアプリに直接リンクするので効果的だと思われる。
- 質問:加盟店の負担について
- 回答:決済手数料とアプリ利用者向けに情報発信やクーポン発行をする場合など、機能に応じて月額使用料などを設けているケースがある。
- 質問:1部署の単年度予算内で行政として原資が充分に用意できない場合は、導入に向けてどのような企画が有効か。
- 回答:例えば、1つの部署として取り組むのではなく、全庁的に取り組み、情報発信のツールをアプリに集約することで、各部署の広告宣伝費を集めて原資をつくるなどの取組も効果的な一つの方法になり得る。
- 質問:加盟店からの手数料(1パーセント程)で同規模自治体(約人口5万人)だと、どれくらいの登録店舗数があれば運用コストを捻出できるか。
- 回答:同規模の自治体(三豊市、観音寺市)の例だと、約300店舗。運用コストは月額約150万円~200万円。
須坂市への提言
- 成功している先行事例はプレミアム商品券などのタイミングで導入しており、利用者にとってインセンティブがないとユーザーを増やすのは難しいと考える。アプリを利用したいと思ってもらえる機能や企画などが必須。
- 加盟店舗数を増やすには事業者側のメリットが必要。利用ユーザー数の増加と登録事業者の増加は比例していくと推測できる為、まずは行政主導で利用ユーザーを増やすことが必要。
- 本事業を1部署の1事業という捉え方ではなく、須坂市全体のDX推進の枠組みの一つと捉え、各部署を横断して他デジタル化関連事業と連動して推進をするべき。必要に応じては加盟事業者や商工会など民間事業者の方もメンバーに加えて推進協議会を設立するべき。
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更新日:2024年03月26日