【市民の声】『世界中の旅人と須坂をつなぐ宿』 ゲストハウス蔵 オーナー 山上万里奈さん(本上町)
地元の人と旅人を繋ぐ場
ゲストハウスは低廉な料金で気軽に泊まれる宿として、利用し易く、また、宿泊者同士や地域の方との交流が楽しめることから、近年利用者が増えている。山上さんがゲストハウスを開業したのは2年前。明治時代に建てられた古民家を、ほぼ自力で改修した。宿の名前は「ゲストハウス蔵」。敷地内には、山上さんのお母さんが経営するカフェも併設している。今回は、古民家をゲストハウスに生まれ変わらせ、世界中の旅人と須坂をつなぐ山上さんに開業までの自身のエピソードについて語ってもらった。
日本語教師からゲストハウスオーナーへ
須坂生まれの山上さんは、高校までを須坂で過ごし、関東の大学に進学。大学で日本語教師の面白さを知り、卒業後は、日本と海外で日本語教師として仕事をした。赴任先の中国では、夏休み中にいろんな場所を巡り、その頃からゲストハウスを利用するようになった。「宿泊料が安く、いろんな人と話せて面白いという理由で泊まっていたんですよ。当時は、ゲストハウスをやろうなんてまったく頭になかったです」と山上さん。
ゲストハウス開業のきっかけは転職。日本語教師以外の仕事で、社会人経験を積みたいという思いからの決断だった。日本に戻って転職した先は、旅館での接客の仕事。「当時、旅館には、英語で対応ができる人が私しかいなかったんですが、その仕事が楽しくて、語学を生かした接客の仕事もいいなと思ったんです。でも旅館は、規模が大きく、お客様の顔も見えないので、自分でやるなら、もう少し小さい規模で、とことんお客さんの相手ができる仕事がいいなと思いました」
忙しくも充実した旅館での仕事の中で、徐々に独立したいと思うようになり、ゲストハウス開業に向けて情報収集を始めた。そして、旅館での仕事が終わると、休む間もなく、ゲストハウス開業に向けて動き出した。
築100年以上の古民家を自らの手でリノベーション
「東京都の品川にある、ゲストハウスオーナーの為の修行場で、丁稚奉公をお願いしたんです。修行先では、お店のコンセプトや経営のノウハウなどを勉強させていただきました。」「須坂で開業した当初も、いろいろアドバイスをいただき、とても感謝しています」と山上さん。修行中は、物件情報が入れば須坂に行き、物件を見ては品川に戻り修行する生活をしていた。
物件が見つかったのは、修業を始めて3ヶ月が経った頃。100年以上昔の明治時代に建てられた建物で、中も広く、奥行きもあり、ゲストハウスにはちょうどいい広さで、何と言っても、当時の雰囲気がそのまま残っていた。しかし、長く空き家だったため、ちりやほこりで呼吸すらできず、 ゴミで足の踏み場もないような状態だった。
自己資金も十分ではなかった山上さんは、出来ることは自分でやろうという思いがあったため、仲間や地元の人に声をかけ、掃除を始めることにした。「はじめは、いつになったら終わるかなという思いもありましたが、徐々に建物が息を吹き返していくのを見ていると、楽しくなってきましたね。自分たちで作り上げたことで、宿への思い入れが強くなりましたよ」少しずつきれいになり、たくさんの人の助けを借りて、ゲストハウス蔵はオープンした。
世界中の旅人と須坂をつなぐ
宿が開業し、初めは宿泊客なんて来るのだろうかと心配していた地域の人も、大きいリュックを背負った海外の宿泊客や観光客が須坂市内を歩く様になると、徐々に応援してくれるようになった。
今では、地元の人と旅人をつなぐゲストハウスとして、須坂になくてはならない存在になっている。「私は、訪れた人と須坂のまちをつなげるのが役目」山上さんは、自分の役割についてそう語った。
宿には、須坂のおすすめノートというものがある。「ノートに市内のお店やおすすめの場所の書き込みがあったら、それを、お店のオーナーさんに見せるんですよ。海外の宿泊者の声を知ると、お店の人も、彼らに対してさらに好意的な印象を持ってくれて、次に来たお客さんにも親切に対応してくれるんです。」好循環を生むアイデアも、彼女の須坂に対する思いから生まれている。「地域の方にはとても助けていただいています。これからも世界中の旅人と須坂をつなげていきたいです」と山上さんは力強く語ってくれた。
インタビュー中にも、良く笑い、宿泊者と談笑していた。「飾れないんですよ」自身の性格について山上さんは語った。その人柄こそが山上さんの最大の魅力。この日も、ゲストハウス蔵は、山上さんの魅力に惹かれた地域の人や旅人で賑わっている。
(2014年8月 地域おこし協力隊 松田)
【注意】インタビューの内容は取材当時のものです。
ゲストハウス 蔵
- 【住所】長野県須坂市本上町39
- 【電話番号】026-214-7945
更新日:2025年02月27日