移住者の声 須坂市地域おこし協力隊 北 直樹の『須坂キラビト』vol.6

更新日:2024年03月26日

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前坂理髪店内で撮影された後列左から前坂政明さん、土屋俊之さん、前列左から 前坂明美さん、前坂拓郎さん、前坂有紗さんの写真

創業100年を前に。前坂理髪店の“技術” / 須坂市地域おこし協力隊 北 直樹の『須坂キラビト』vol.6

地域おこし協力隊の北直樹(自称のーす)がお届けする連載「須坂キラビト」は、須坂市に関わるキラリと光る情熱を持つ人をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺います。

第6回目は須坂市上中町の「前坂理髪店 前坂拓郎さん」を取材しました。

前坂理髪店内で撮影された後列左から前坂政明さん、土屋俊之さん、前列左から 前坂明美さん、前坂拓郎さん、前坂有紗さんの写真

前坂理髪店オールスターズ

後列左から 前坂政明さん、土屋俊之さん
前列左から 前坂明美さん、前坂拓郎さん、前坂有紗さん

前坂拓郎さん(30歳)
須坂市出身
1992年6月4日生
中野西高校を卒業後、東京の専門学校を経て千葉県浦安市の美容室で7年の下積み時代を送る。2020年に須坂市へ戻り4代目として家業を継ぎ、2024年度の100周年に向けて22年12月に理美容室としてリニューアルオープンした。

“拓郎“との出会い

 実は拓郎さんに会う前に私が居酒屋でお父さんとお会いし、お互いに「吉田拓郎」が好きだってところから今回のご縁を頂きました!

『父から聞いてます(笑)父はそうやってお話をして“お客さん“を作るので、本当に尊敬しています。実は私の名前の“拓郎”もご存じの通り、吉田拓郎から来ています。私が男の子と決まった時点で名前が“拓郎”に決まってたらしくて…(笑)』

 そうだったんですね、そうじゃないかってずっと聞いてみたかったんです。ちょっとプライベートの話になりますが、「NHKのど自慢」にも出たことがあるとか?

『今思うと凄いことなんですが…2020年に千葉での修業を終えて須坂に戻ってきたとき“前坂拓郎”のお客さんが全く居なかったんです。せっかく戻ったのになかなか友人や知人にも伝えられなくて、もどかしい思いをしていたところ、たまたまメセナホール関係のお客さんから「のど自慢来るらしいけど、出る?」って言われたので、これはチャンスだ!と思って応募したんです。当時は冷やかし半分で気楽に考えてました(笑)』

 もともと歌は得意だったんですか!?

『別に得意とかではなかったんですけど、子供の頃から誰よりも大きい声で歌うことに自信がありました(笑)予選も150人中審査を通るのが18人という狭き門だったので、とにかく楽しむことだけ考えていました。その後、合格の鐘までもらえるとは…』

 声が大きいだけでは合格しません(笑)反響は大きかったですか!?

『放送から「見たよ!」っていうお客さんも増えて、新聞が取材に来たりと、思った以上の成果がありました。本当にありがたいことです…。実は、のど自慢大会がコロナの影響で中止続きだったんですが、須坂で2年ぶりに開催されたんです。会場では、市職員やスタッフが開催に向けて細心の注意を払って運営している姿を見て、こんな風に知ってもらえたのも皆さんのおかげだと強く感じています』

のど自慢大会出場時の前坂拓郎さんが歌っている写真と前坂拓郎さんが右手に色紙、左手に優勝カップを持った前坂拓郎さんの写真

のど自慢大会出場の映像と出場記念に

20代“技術“への投資

有孔ボードに木製の額縁に入れられて飾られた創業時の料金表

大切に保管されてきた創業時の料金表

 のど自慢で知り合った方も今は常連さんになるなど、拓郎さんが戻ってきてからお店に活気が戻ってきたとも言われています。集客で意識してきたことはありましたか?

『私で4代目なのですが、先代みんながいろんな集客の仕方をしてきています。私の父は会話重視型で、髪を切るというより「話に来る」お客様もいるくらい(笑)私はここに来る前に千葉で修業してきたんですけど、東京ではなく千葉を選んだ理由は「集客の技術」を学ぶためだったんです。首都圏から千葉に人を呼ぶ、という技術は長野市と須坂市の関係も同じだと思ったんです。今このお店には無い「技術」を一つでも持ち帰りたいと思い、20代はひたすら修業に費やしました。それは髪に関する技術的なものはもちろん、会話やSNSなどもそうです。今は新しい層として女性のお客様をターゲットに集客をしています』

女性客が通える理美容店を作りたい

女性の髪をセットする前坂拓郎さんと9枚並べられた理美容店でセットされたお客様の横顔写真

女性客の髪を整える拓郎さん

 理髪店というとどちらかというと男性イメージですね…

『理髪店って男性でも女性でも普通に使えるんですよ。美容院との違いはお客様にとっては“顔を剃れる”くらい。だから私は常々「女性も入れる理美容室にすれば面白いのでは?」と考えてました。そういった経緯で、修業先は女性客6割の理美容室で働くことを選びました』

 男性メインの理髪店の専門学校で学んできて、女性の髪って簡単に対応できるものなのですか!?

『やはり最初は女性の髪の扱いがわからず戸惑いだらけでした。でも、自分がここで女性客への技術を学べば父に小言を言われないと思い、現場でがむしゃらに学びました(笑)友達の誘いも何度も断り、仕事と家の往復でとにかく“技術”を学びました。そのうちに女性客への技術も、信頼も上がってきたので店長も任されました。現場で技術を学んでいくことは本当に大変でした。この世界は人に“教える“ことは基本的にしませんから。でも私の場合は小さい頃から父を見ていたこともあり、先輩や同僚を見て“技術を盗む”ことは自然に出来ていました』

 その努力が実を結んで、今回「理美容室」としてリニューアルオープンすることが出来ましたもんね!何かハードルはありましたか?

「その頃の学びや、妻が美容師だったこともあり、理美容室としてスムーズに女性客を呼べる体制が整いました。おかげで今は女性客も順調に増えています!』

 確かにSNSでも女性客が多いなという印象があります。様々な客層が来店される中で、初めてのお客様に対して気にかけていることはありますか?

『この仕事は初めて出会った人の頭や髪の毛というデリケートな場所を触るので、とにかく“安心感”を与えることにこだわっています。私は最初の“鏡の前に立った時“と”ヒアリング“で安心感を与える工夫をしています。まずは立ち振る舞いがまず堂々としていること。ヒアリングは男子高校生相手ならフラットでお兄さん目線で話す方が心を開いてくれるし、女性には髪に関するトレンドや知識の話もしっかり取り入れて「勉強してるなコイツ」って思われるようにしたり…もちろんこれは例の1つです。この仕事は次にお客様が再来店したときが“結果”が出るときなので、すぐに評価がわからないんです。だから目の前のお客様が満足して帰って頂けるように、その人や年代に合わせた接客を心がけています』

 私も初めて行った時にそれを強く感じました。それが出来るのは、20代の頃に費やした“技術”と“自信”なんだと思います!

反骨精神×須坂に戻る選択

 関東でも独立出来たと思うんですが、須坂に戻ってくることに抵抗や葛藤は無かったですか?

『ずっと心の中に“須坂”があって、いずれ戻ってくるつもりでした。もっと早く戻ってきても良かったんですけど…創業100周年を前にしっかりと“技術”をつけて帰ってきたかったので時間がかかってしまいました』

 こだわった“女性層への技術向上”ですよね。しっかりと考えてから家業を継ぐあたりが拓郎さんらしい。

『専門時代の友達からも「家業を継げるっていいよな」って言われたこともあって、絶対楽して継いだって思われたくなかった。だから戻ったら「自分の色を出す!」って決めていたんです。母からも「失敗したらいつでも戻ってきていいよ」って言われてたので、余計になかなか帰れませんでした(笑)でも、母のその言葉のお陰で仕事に本当に打ち込めたし、私を育てたのはそういう“反骨精神”なのかもしれません』

 そういうひねくれた感じって若い頃の男は特にありますよね(笑)改めて戻ってきた須坂はいかがでしょう?

『高校時代はわからなかったんですけど、須坂には若くて面白いお店も人も沢山いるし、これからも可能性を感じる町だなと思っています。何かを始めれば須坂ではオンリー1にもナンバー1にもなれるチャンスがある。東京ではどんなアイディアも既に出尽くされていて、産みの苦しみを味わって来たので…。実は理美容室も須坂では“初“なんですよ』

 須坂の理美容室は初だったんですね!説得力あります。ところで休日はどんな過ごし方をしているんですか?

『今は夫婦でアウトドアに行ったり、美味しいものを食べたり、お客さんとの会話にもなるので新しいお店や施設、イベントには出来るだけ足を運ぶようにしています。でもちょっと息抜きしたいときは1人でボーっと釣りをしています。釣りの時は仕事も家族のことも一旦忘れて釣りに集中します(笑)そうやって頭のON・OFFが出来るのでオススメです』

最後に~30代の時間の使い方~

 拓郎さんの想いは今後どのようになっていくのでしょうか?ビジョンがあったら教えて下さい!

『まず1番はこのお店をお客さんでいっぱいにすること。それが“親孝行”でもあるし、先代たちが守ってきたこのお店への恩返しでもあると思っているんです。お客さんにはここをパワースポットと思って頂いて、この店に来たら元気がもらえるな…そこは年齢も性別も関係なく感じてもらえるお店にしていきたいです。今も高校生の恋愛相談とか聞いたりもしているんですよ(笑)
もう1つは、ここで「理容師」を育てたいということ。父も先代達も沢山の理容師をここで育てて独立させてきたんです。実は長野でも理容師が減っていてほとんど“ゼロ”に近いくらい。だから理容師の仕事の楽しさもどんどん発信していきたいし、それが私を育ててくれたこの業界への恩返しと思っています。そしてこの店で修業してどんどん独立して理容室が増えていってほしいですね』

 30代は業界全体のことを考えて過ごすというアツさは拓郎さんらしくて本当に応援したくなります!長時間インタビューありがとうございました!

リニューアルされた店内

白色を基調とした外壁の前坂理美容店と2台並べられた茶色のシャンプー台の写真

「前坂理髪店」ホームページは下記リンクをご覧ください。

のーすレコメンド!

30代からのメンズパーマ。
髪のボリュームが落ちて来るので、自然に出すには実はパーマが簡単だったりします。私も「ニュアンスパーマ」という恰好つけたパーマをやっています(笑)
前坂さんで自然な形で仕上げてもらっていて、既にリピート確定です(笑)
はじめてのパーマの人にもパーマのチリチリ感が嫌いな人もオススメです!

前坂理髪店でセットされた写真や店舗の外装の写真が並んだ真ん中に赤い丸がついた男性の横顔写真

のーすレポート

拓郎さんの熱さを肌で感じることができ、私の活動の活力になる取材になった。拓郎さんの20代の生き方は私も共通するところがあり、沢山の時間を費やしてきたからこそ“自信”となり“結果”となっているのだと感じた。さらに30代は自分の幸せだけでなく、業界全体も見据えて時間を使っていきたいという思いに経営者としてのキラリと光る情熱を感じた。
前坂理髪店に初めて足を運んだ時「こんにちは!」という全員の元気な声で迎えられ、みんなが気さくに話しかけてくれたので楽しく利用することが出来た。移住して新しいヘアメイクさんを探していた私にとってとても嬉しい出会いで、なんだか“仲間”に入れてもらえたみたいで嬉しかった。私はいろいろなところに住んできてヘアメイクは生活にとって欠かせないものだと思っている。そこで好きなヘアメイクさんに出会えるかで“住んで良かった“とも思えるし、何を隠そう大切な商談前やデート、合コンなど自分の人生に大きく左右するイベントには必ずヘアメイクが関わってきた(笑)
この度、私自身もプライベートでのフォトウェディング前に前坂理髪店にお世話になり、一生残るものを一緒に作って頂いた。やっぱり私は技術もさることながら“信頼できる人“に髪を切ってもらいたい。理容師や美容師は、人と人とを繋げる素敵な仕事なんだと今回改めて感じることが出来た。
これだけ褒めたのだから、次はもっともっとカッコよくしてくれるだろう(笑)

この記事を書いた人

北 直樹 (自称のーす)
1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と2人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中

  • 趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
  • 好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
  • 主な活動:空き家バンク、信州芋煮会

夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること

この記事に関するお問い合わせ先

総務部 政策推進課
所在地:〒382-8511 長野県須坂市大字須坂1528番地の1
電話番号:026-248-9017 ファックス:026-246-0750
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