移住者の声 須坂市地域おこし協力隊 北 直樹の『須坂キラビト』vol.12

更新日:2024年03月26日

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ヴィレッジ・ナニココ内で赤いテーブルに手を組む祝井一幸さんの写真

ゴールは走ってから見つければいい / 須坂市地域おこし協力隊 北 直樹の『須坂キラビト』vol.12

地域おこし協力隊の北直樹(自称のーす)がお届けする連載「須坂キラビト」は、須坂市に関わるキラリと光る情熱を持つ人をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺います。

第12回目はあっぷさいくる蔵部の祝井一幸さんを取材しました!

ヴィレッジ・ナニココ内で赤いテーブルに手を組む祝井一幸さんの写真

祝井一幸(カズ)プロフィール

愛知県出身。
高校を中退後、建設業などをしながら自営を始める。
2021年に須坂市へ移住。2022年新事業の立ち上げを支援する一般社団法人「ドリームサポート」の活動の一つとして「あっぷさいくる蔵部」を設立。2023年高橋町の倉庫を改装して「なからビレッジナニココ」を開村予定。(2023年3月取材時点)

辿り着いたら須坂。身に着けた武器を持たないゲームのはじまり。

 カズさん、ついにこの日が来ました!いろいろと謎が多いので今日はいろいろ暴いていこうと思います。愛知県生まれのカズさんが、須坂に来た理由から教えて下さい。

凸凹なインタビューになりそうだね(笑)
別に移住先は須坂でもどこでも良かったんです。ゴールを決めない旅の途中で車がガス欠したのがたまたま須坂市っていう。移住前は会社経営もしていて、わりと順風満帆な生活を送ってたんですけど、40歳を過ぎたぐらいから、急にこのまま歳を重ねて本当に楽しいのか?という衝動に駆られて「誰1人知らない土地でもうひと勝負したい!」と長い人生の暇つぶしゲームを楽しめる場所に旅しようと思ったんです。
このゲームで決めていたルールは、今まで身につけたアイテムを使わないこと。「お金」「知識」「資格」など。これを使い出したら、新しいゲームを行う意味がないので、そこだけは封印って感じで、愛知県に全部置いてきました。

 移住を“新しい人生のゲーム”と例えるのが面白いですし、ガス欠したのが須坂ってのもすごい。

本当は新潟県を目指してたんだけど、ここに居ついてましたね。それだけ居心地が良かったのかもしれない。この須坂で何の武器も持たないことで、今までに出会ったことのない本当に尊敬できる人とも沢山出会えました。特に自分より年下の尊敬できる人が沢山いるんです。こんなに尊敬できる若手が多い町はすごいと思っています。

ストーブを囲んで談笑する芋煮会参加者の写真

芋煮会でも老若男女問わず話ができるカズさん(少し酔っ払い。中央右)

 そんな風に年齢や経歴をハードルしないカズさんの考え方が好きです。ちなみに移住してまず困るのが仕事だと思います。普段は何を?

これは色々な人から良く聞かれる質問で…
実は僕自身がよくわかってないんです。なぜなら、今の世の中だいたいが仕事に対しての対価が『お金』だから。説明しても理解しにくい人も多いと思うけど、僕は相談に乗ったり、講習をしたり、物を作ったり、直したり、色々な事をしているがその殆どに『お金』を頂いていないんです。『ドネーション(寄付)』を頂く場合もあるけど、だいたいは“モノ”か“コト”で返してもらうので、あまり仕事という概念がないんです。須坂に来てからは衣食住から始まり、活動拠点、倉庫、車など、生きていくインフラは、ほぼみなさんから頂きました。お金の関係はそこで完結してしまうんですが『モノ』『コト』は循環していくんです。

 これはすごく特殊です(笑)でも、お金じゃない対価で物々交換してく生活って理想的かもしれません。人それぞれの特徴って「時給」とか「お金」で換算することにそもそも無理があるのかもしれませんし。

そうだよね。だから僕はいただいた“モノ”を僕ではない必要な人に届けたり、僕ではない困った人に“コト”をしてあげて!という事も多々ある。だから全く知らない人から「ありがとう、助かりました」と感謝される事も多い。感謝が循環してまた何倍にもなって自分に返って来るからオモシロイ。
僕自身、仕事の報酬と感じているのはどんどん人が誰かを紹介してくれて、どんどん仲間が増えてきたことなのかも!?と、最近感じています。何か危ない宗教に聞こえるかも知れないけど…基本、僕は何の思想もないんです。

 面白いです。経営者だったカズさん、昔は違いましたよね?

昔は常に結果主義でイライラしてたね。会社を経営する上で、やっぱり部下には期待するし、出来なければ怒ってしまう。今は期待ではなく“信用”することに気持ちも変わってきて「やってくれたらラッキー」ぐらいになってきた。そのおかげで人にもイライラすることは無くなりました(笑)
他にも、愛知から離れる、つまり会社を辞めると言った時に身近にいた人が離れて行ったりして“お金”で繋がっていたんだなと悟った時に考え方が180度変わりましたね。

 なるほど。仕事がもらえることに価値を感じて近づいてくる人もいますからね。実際にはそうやって世の中は成り立っているし、難しいところです…

究極は“お金”のいらない世界を目指しているのかも。なんだか怪しい勧誘みたいだし、次の話に行こう(笑)

「あっぷさいくる蔵部」「なからビレッジナニココ」とは?

 あっぷさいくる蔵部は私も少し活動に参加したことがありますが、市内に眠っているリンゴ箱を再生して甦らせたりするプロジェクトですよね?

リンゴ箱にこだわらず、不要になったモノにちょっと手を加えて新たな価値をつけるアップサイクル活動。今年1月にはラボもオープンしました。
日本は諸外国と比べてもリサイクル文化の定着が低く、ゴミばかりが増えていく。そう言ったところに目をつけたのがきっかけで、ラボの利用料も『お金』『モノ』『コト』の好きな利用方法が選べる仕組みなんです。だから気軽にリンゴ箱で何か作りたい!と思えば足を運んでほしいですね。

中央にアップサイクルdem町おこしサステナブルなコミュニティと書かれた活動様子写真が掲載された写真

 いいですね、アップサイクルの考えは本当に素敵です。もう1つ「なからビレッジナニココ」

2023年4月から高橋町に100人限定の村『なからビレッジ・ナニココ』がオープンする予定です(注意:2023年3月取材時点)。
“100人が『お互いさま』が出来れば、たぶん余程の事は何とでもなるしお金はいらない”というのがコンセプト。そう言った考えに賛同してくれる人が集まってくれれば大きな力になるんじゃないかって考えているんです。いろいろな施設やお金をかけて出来るものは沢山ある。でも、こういったサードプレイスこそが実は世の中に必要なんじゃないかって真剣に考えているんです。

 温かい取り組みですね。どうなっていくのか気になります(笑)またオープンしたら是非、取材させて下さい。

今までに無かったことに挑戦しているから、この先どうなるのか全く分からない。もともと着地点も決めてないし、やりながら『なから』決めていく。そこがオモシロイと思ってて、どうせしっかりとしたビジョンを作ったっところで、だいたい上手くいかないし、たいがい変わる。『なからOK~』の志がブレなければ、きっと何でも何となく上手くって!根拠のない自信があるんです。

 ゴールを決めずに走るって、哲学的で面白いです。そもそも須坂にたどり着いたときもゴールを決めて無かったですもんね。これがカズさんの“生き方“なんですね。

不用品を集めて作ったなからヴィレッジ・ナニココの内部写真

不用品を集めて作ったなからヴィレッジ・ナニココ

空き家バンク循環活動の市民代表として

 カズさんには私と共に“空き家の掘り起こし”にもご協力いただいております。勝手に市民代表として活動を依頼してます(笑)

まだ3年しか住んでいないのにね(笑)
10年後には、日本の空家率が3割を超えると言われていて深刻な課題だと思う。全国で様々な方法で対策をしても、なかなか上手くいかない中、今回の“チャレンジショップとの連携”の試みは非常に面白いと思う!僕が市民代表に選ばれたのも、色々な空家を有効活用することによって、色々な情報が集まってくるから選出されたと思っています。これからも、空家活用方法の良いモデルケースが作れればと思うけど、お金はさておき、何と言っても掘り起こしには途方もない時間と、かなりの労力が必要!全ての人がwin-winになるために、民間人は僕1人ではなく、もっともっと増やした方が良いと思う。特に店舗を持ちたい人などは、一緒に活動することで、我ごととなりファンになってくれたりもする。損得なしに動いてくれる人、夢を応援してくれる人、楽しみたい人、色々な人が、我ごとと関わってくれる。批判を恐れず僕的な言葉で言うなら“アソビゴコロ“で、少しずつ多くの人が楽しみながら情報を出し合い、汗をかき、場所ができる。この一見遠回りのようなやり方が、一番近い方法ではないかなと、最近感じているんです。

 この活動は“アップサイクル”の概念にもつながりますもんね。私もこのインタビューから空き家の掘り起こしに関心を持ってくれる人が1人でも多く出ると嬉しいです。

地域おこし協力隊活動時の8名の集合写真

地域おこし協力隊の活動もいつも応援してくれている(左上から2人目)

おわりに

 そろそろ締めに入っていくのですが、移住先と決めたこの町への想いをお聞きしたいです。

正直、移住して月日の浅い僕が須坂市に対しての大それた想いなどほぼほぼない(笑) ただ、自分の周りにいる人達を笑顔にしたいだけ!それ以上でも、それ以下でもない。
人って良くも悪くも伝染していく生物なので、その結果、たまたま住んでいる『須坂市』の人達の笑顔が増えていくのなら、それはそれで結果オーライかな。この町で僕と一緒に何かやりたいって人と“何か“を作っていきたいんです。僕の尊敬している人の言葉で「瓦は縦に積むと1人が雨を凌げるが、横に広げていければ多くの人が雨を凌げる」っていうのがあって、一緒に雨をしのげるものを作っていきたい。そんなイメージかな。

 ありがとうございます。最後に今後の“夢”を!

やっぱり僕自身『夢』とか明確に定まったビジョンはないんです。目的地やゴールも、あえて定めない方がオモシロイ!と思っています。その時に、楽しそうなことや、心揺さぶることを、ただただ活動しているだけ。常にゴールポストを動かしたり、どんどんゴールポストを増やしたりして、毎日を遊んでいるだけ!『アップサイクルラボ』の所長も『なからビレッジ・ナニココ』の村長も、任期を1年と決めているので、1年後は、また違う遊び場を作っている様な気がするね。

 カズさんらしさ全開の凸凹インタビューでした!長時間ありがとうございました!

なからヴィレッジ・ナニココ内部でインタビューを受ける赤いテーブルに座った祝井一幸さんの写真

のーすレコメンド

地域おこし協力隊の事務所にあるリンゴ箱の観葉植物入れ。
ただ入れるだけでオシャレに。そして、そばにいる野澤さんもめっちゃオシャレに。

手前にリンゴ箱に入れた観葉植物とパソコン作業をする野澤さんの写真

のーすレポート

今回のインタビューを通して、お金で測れない価値を自分は忘れていないか?ということを感じました。
損得勘定ばかりで動いて、時間を対価にして働くことに慣れているのかもしれない。と。
世の中のすべてがこうなるわけにはいかないと思うが、“お金だけじゃない”というサードプレイスの考えは本当に面白いと思うし、そんなことを本当にやってしまうカズさんを尊敬している。
社会で成功し、失敗してきたカズさんだからこそできる“重みのある行動“とも思う。
自分がガムシャラに社会に時間と労力費やしてきたことで、何か大きく感じることがあったのだと思う。そこまで真剣に向き合ったからこそ、この境地にたどり着いたのではないだろうか。
バカバカしいと感じる人もいるかもしれない。それは当然だと思う。これだけ世の中が便利になり、お金でほとんどのことが解決できるからだ。
到底自分にはこの生き方は出来ないが、1週間のうちの一瞬は損得を抜きにして“誰かのために生きる時間”があっても良いのかなと感じました。それは家族の時間もそうだし、友達との時間もそう。
皆さんもお金じゃない何かで、心に休息を与える時間を取ってみてはいかがでしょうか?
これを機に自分の心も“アップサイクル”しましょ!

この記事を書いた人

北 直樹 (自称のーす)
1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と二人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中

  • 趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
  • 好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
  • 主な活動:空き家バンク、信州芋煮会

夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること

野外で作業する北直樹さんの写真

この記事に関するお問い合わせ先

総務部 政策推進課
所在地:〒382-8511 長野県須坂市大字須坂1528番地の1
電話番号:026-248-9017 ファックス:026-246-0750
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