須坂市移住応援サイト スザカでくらす
須坂市では、起業した2名の協力隊OBに呼びかけ「須坂市地域おこし協議会」を2021年度に立ち上げました。協力隊OBの起業活動に同行することで「相談できる仲間がいて」「素早く人脈を築き」「起業まで活動が繋がり」「定住できる」仕組み『地域おこし協力隊信州須坂モデル』を目指し、現在4名の隊員(2021年度2名、2022年度2名)が活動しています。
※地域おこし協力隊信州須坂モデルの詳細は下記をご覧ください
https://www.city.suzaka.nagano.jp/kurasuzaka/info.php?id=317
今回(2022年11月)、須坂市地域おこし協議会の活動がスタートして1年が経過したタイミングで、協議会のメンバー6名(会長・副会長、協力隊4名)に「地域おこし協力隊信州須坂モデル」のメリットやデメリットについてアンケート(回答様式自由)を実施しました。
アンケート結果については、全国の協力隊や協力隊を受け入れる自治体担当者、地域おこし協力隊を希望する皆さんの参考になればと思い、メンバーの了解を得て公表します。
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●村田隊員(2021年8月~活動期間1年3か月)
▼地域おこし協議会については、いくつかの課題については解決できて、またいくつかはできていないといった感じでしょうか。
解決できているのは、「初年度の憂鬱」と「活動費」だと思います。地域おこし協力隊として移住したはいいが、憧れた田舎生活とかけ離れた現実にショックを受け、今までの経験やスキルを十分に活かせなかったり。採用する市区町村の期待もあると思いますが、例えば観光PRで地域おこし協力隊を採用したにも関わらず初めの1年は雑用とかで終わってしまい十分な結果を残すことができないとかです。そんな感じだと本人は会社をやめてまで何しに移住したのだろうというのが不安としてあっても不思議ではないです。そんなときに協議会という組織に所属し活動できたことは、地域を知るきっかけを多く与えられましたし、チームで活動する為、孤独といったこともあまり感じませんでした。地域おこし協力隊に共感してくれる人がいることでどれだけ救われたか。
もう一つが、協議会を結成した当初の目的とは違う「活動費」の使い方です。
今まで会社員だった人が行政の中で働くということはものすごいギャップがあります。私も2年目にして活動費や予算ということが少しずつわかってきました。協議会の方からも活動費の使い方についてアドバイスを受けることができたので、他の市区町村の地域おこし協力隊みたいに活動費が全く使えないということもなく、協議会に入って良かったと思っています。
▼解決できていないのは、「人間関係」です。これは協議会である程度の人脈を紹介してもらえますが、自分がやりたい方向性が定まったら自分で人脈を広げるしか無いです。「採用」は難しいですね。これに関しては実際に地域おこし協力隊として働いて見てもらうしかないと思います。なので、3年目の隊員に協力隊インターン生を同行させるのはどうでしょうか。「すれ違い」は地域おこし協力隊の活動では必ず起こることだと思います。そもそも、やって欲しいことがあるのだから採用したのに、自分勝手なことされて「移住前と移住後でギャップがありました。」なんて言われてもって感じです。誰もが認めるような活動を地域を巻き込んでするしか無いと思います。
と、協議会でできることはあくまで組織としての活動、できないことは本人次第といった感じです。
▼ミスマッチという問題は協力隊の隊員が必ず抱える問題であり乗り越えるべき壁であると思います。
ミスマッチという問題は市区町村の数×協力隊の数くらい天文学的な数だけあるので、この問題解決に心血注ぐよりも隊員自身の潜在能力次第では無いでしょうか?もちろんある程度のケアは必要ですが。
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●小田隊員(2021年9月~活動期間1年2か月)
▼メリット
・相談できる人(OB、協力隊)が最初からいる。
・OBや先輩協力隊の人脈が蓄積されているため、地域との繋がりを作りやすい。
・OBや先輩協力隊の作った活動が蓄積されているため、スムーズに地域活動に参加することができる。
・活動の方向性が近いメンバーがいれば一緒に活動できる。(日々の活動、イベントの開催、起業時など。)
今後人数が増えてくればこのメリットの効果も増してくると思う。
▼デメリット
・同行に多くの時間を割かれる。(1年目の半分とすると、全体3年間の1/6)
・同行は雑用作業に近いことが多いため、OJTでスキルを得るのは難しい。
・フリーミッションのため、何をしているかが街の人に理解されにくい。
▼起業について
・起業をテーマとして掲げてはいるが、起業活動や起業サポート的な要素はなく、全て個々の協力隊に一任されている。(起業をしたい人たちが集まってきているだけなイメージ)
現在のままの形とするなら、より自由度の高い雇用形態である委託型の方が信州須坂モデルには合っているのではないか。
▼協議会について
・現状、所属するだけの団体になっている。
協力隊の同行活動のリターンとして、協議会自体のPRや起業サポートなど、協議会としても何か役割を担うべきだと思う。
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●北隊員(2021年8月~活動期間3か月)
現在の地域おこし協議会のギャップ・課題について
▼もともと面接時に与えられた活動については
ソルガムとキャンプ場以外はほぼやっていない。
キャンプ場に至っても元々は運営であったり、ソルガムを使った新商品の開発なども記載されていたが、実際にはそのような活動はほとんどしていない。
▼同行をする際に全体像が見えないことが多く
単なる労働力の1つになっていると感じてしまうことがある
→同行をさせる側も年間計画やスケジュールを出すべき
今の活動が何のためなのか?起業の役に立っているのか見えない
▼市が行動を任せるのは良いが・・・
ある程度の縛りも必要では?
例えばスケジュール管理など。
現在の進捗もある程度コントロールが必要と感じる(誰もが自分でPDCAを回せる人間ではない)
▼突然芋煮会を任されるなどそもそもの活動内容と違う案件が振ってきて負荷も大きく割とストレスだった(笑)
今は芋煮会をすることの意義を自分なりに見つけて楽しみだしている(原価、調達、企画、発信など)
今では芋煮の人とまで言われるので、一生懸命やって良かったと思う
→ただ起業につながるかはまだ未知数
▼空き家バンクとの活動と同行とで休みが全く取れない。
この2か月ほとんど休んでいない。休日は芋煮の買い出しや内覧があり実質休めない。
→結果が見えない故に休みのない活動が実を結ぶか心配。市もこちらのスケジュールを把握してほしい。
▼協議会の存在の意味がわからない(本当に起業につながる組織なのか?)
→同行やSNSのシェア発信は義務なのか、義務じゃないのか?
芋煮会は義務なのか義務じゃないのか?そもそもそんな議論をしているのか。
▼活動に関するプロのアドバイスが欲しい
→起業につながっているのかなどコンサルなど意見がほしい
▼もっと建設的な意見交換をしたい
→報告会の意味をしっかりと話し合いたい(他人の活動に発言する意味は?そもそも組織なのか、個人商店の集まりなのか)
▼市民の目は気にするべし。ある程度の秩序やルールは必要。
→出来ていない人が多い。出来ていないから仕方ないで良いのか?
▼紙提出書類が多く時代遅れ感がある(前職は9割ペーパーレスだった)
→市としてすぐに取り組んでほしい。
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●野澤隊員(2022年10月~活動期間1か月)
現時点における協議会のメリットデメリットについて
▼協議会について
・メリット
OBの気づいてきた人脈のおかげてすぐに地域に馴染むことが出来た。
ただ、未開拓の地域も多々あるため、あくまで一部の地域の人たちに過ぎないが、自分一人で一からスタートした時のことを考えると圧倒的にスピーディな人間関係を築くことが出来た。
OBの行っている事業がアウトドア寄りなのでキャンプ場の運営に関わらせてもらったりして上手く同行を活用できている。
ただ、OBの事業と自分のやりたいことがマッチしない場合、協議会のメリットが上手く引き出せない場合があると考えられる。
▼協議会について
・デメリット
OBの活動と自分のやりたい活動内容が合致しないと、OBとの同行がただの「手伝い」になってしまう。 ただ、これは隊員自身の考え方によると思われる。
(「手伝わされている」とだけ考えるようになってしまうと何も生み出せなくなってしまう。)
まだOBが二人しかいないので、事業内容に限りがあるため現隊員とのミスマッチが起きてしまっていることが考えられる。
今後、協力隊を卒業して起業したOBが増えれば、協力隊員のやりたいこととOBの事業がマッチする選択肢が増えると考えられる。
▼フリーミッション制について
他の協力隊はほとんどがミッション制であることが分かった。
(逆に知らなかったのは自分の情報収集能力不足である…)
・メリット
協力隊として活動している中でやりたいことを見つけて途中で方向転換可能なところ。
・デメリット
やりたいことを模索する故、発散してしまい、何をやりたいのか分からなくなり時間だけが過ぎて、最終的に何も結び付かないまま任期満了する可能性がある。
▼協力隊活動資金について
他の地域の協力隊の話を聞くと、活動資金を使うには「稟議書」の提出と承認が必要でそれがとても手間がかかり、あげく否決されたりするので大変だという話を聞いた。
・メリット
我々の活動においてはそれらが無く、とてもスムーズに決済出来る(領収書があれば事後報告でも良い)のは良いと思う。
・デメリット
これは「性善説」によって成り立っている。
そのうち「協力隊の活動に関係無いものに、あたかも活動資金として使用している。」 と見せるような使い方をする隊員が遅かれ早かれ現れると思われる。
そのような時に長期間資金が不正に使用されていなか確認するためにも、月初に先月分の活動費の領収書の提出をして確認した方が良いと考える。(現在は年度末に一年度分まとめて提出?)
私自身、前職の顧客が防衛省だったので、仕事の資金は税金から賄われていたため日頃から業務内容や実績をかなり厳しくチェックされていた。
協力隊の活動資金も同じく税金から賄われているはずなので、そこまで厳しくする必要は無いと思われるが、各個人に税金を使っているという自覚を芽生えさせるためにも報告は定期的にしっかりとさたほうが良いと考える。
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〇早川協議会会長(協力隊OB)
▼採用について
・確保されている採用枠をできれば埋めたいという気持ちが発生してしまっていた。
・現地説明会→面接というフローで人間性を見抜くことは難しい。
・常識力>熱意>やりたいこと という見方で採用を決めていた気がする。
▼1年目(1期生について)
・私自身が築いてきた人脈から地域に馴染んでいった為、地域からの受け入れ印象も良かった(短時間で地域に馴染むことができ、協議会の目的を達成しているように感じる)
・当事者の比較対象が前例もなく同期に限られる為、スケジュール感、スピード感が伝えづらかった
・地域に馴染むことはできても「やりたいこと」についてはほぼ0スタートとなっている為、協力隊当事者の能力任せなところもある
・協議会としての拠点がない為、活動費の用途が隊員同士で重複したり、隊員同士の定期的なコミュニケーションの場が少ない
・協議会側として同行についても「教えるコスト」がかかり、またその後も隊員としては学ぶ姿勢で取り組む為、「手伝ってもらう」メリットよりコストの方が大きいと感じる時が多々あった
▼2年目(2期生について)
・年齢も人生経験も上の隊員が加わったが、特にそれについてやりづらさは感じなかった。(年が近いこともあると思う)
・1期生から自然に人脈や経験を引き継いでくれた為、協議会側としての労力は少なくなった。
・1期生という前例との比較があることや、1期生との交流により、現行制度の新たな課題が見出せるようになってきた
・1期生や同期との関わりの中で、1期生の1年目の動き方に比べてより積極的でスピード感があるように感じる(人としての性質性格の問題かもしれない)
▼協力隊体制が抱える課題へのアプローチ
・「初年度の憂鬱」については運営側から見るに地域にも馴染みやすく、孤立することもないことから協議会制度が解決になっているように思える。
・同期やOBという存在がいる為、活動費や協力隊制度自体について大きな疑問、疑念が生まれていないように感じる。
・行政ルール(活動費の使い方)などについても協議会という組織が間にいることで民間企業とのギャップが少なくなるように感じる。
▼協議会制度の課題と今後
・現在2期生の受け入れが終わり、協議会当初計画の2年目の体制までを実施してきた。3年目(起業開始、起業準備)、退任後の地域内定住、起業までを現隊員が実現することができれば成功モデルになり得る。
・運営側も柔軟に現役隊員や行政側とコミュニケーションを図り、柔軟に諸問題について対応していくことで、より安定した制度体制を目指したい。
・協議会メンバーを増員すれば1年目の動き方の幅が広がると思うが、組織として大きくなるとその分問題も発生するため、慎重に協議が必要。
(理想とすれば協議会制度発足後の協力隊が起業し、運営に加わること)
・同行の問題について新しい提案として1年間の不定期部分同行ではなく、期間を決めたインターン制度なども検討したい。
・拠点の問題について行政側で場所の準備ができるのであれば事務局を置き、隊員の活動中心拠点かつ活動費で購入した機械設備の集約管理、隊員同士のコミュニケーションの場としたい。
・活動費精算といった事務・経理作業については可能であれば行政側に委ねたい。
・協力隊が活動しやすい環境づくりと起業支援については別ものとして議論・対策を講じていった方が良いと感じる。
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〇古川協議会副会長(協力隊OB)
▼メリット
・良くも悪くもですが、自主性を重視し、自主活動の時間も多いため、「やりたいことができない」という状況には比較的なりにくいとは思います。
・完全ではないですが、「運次第のマッチング」からは一歩抜け出せていると思います。
・「人脈」という点では双方で成功のように思います。
・活動費は使いやすい方だと思います
・協力隊同士のつながりは少なくとも協議会の内部ではあるように思えます。1年目に一緒に活動できる人がいないという課題は一部克服できていると感じます
▼デメリット
・協議会側(OB側、受け入れ側)は仕事内容に人手が必要なものがない場合かえって手間と負担が増えるだけになってしまう。
私の場合ですが、使い切れておらず、負担が多いという感覚は強いです。(これは私の場合ペンションのこともあり、起業したものが副業のようになっている現状にも起因してもいますので一概には言えませんが、同じような状態の人にとってはこのシステムの受け入れ側は負担になってしまう場合もあるとは思います)
・業務がフリー型で、かつ自主活動が多い分、手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けるシステムだと感じています。協力隊本人に依存してしまう部分ですが、採用時点で見抜くことは難しいですので、ある意味でここは運なのかもしれないと感じています。かといって、あまり業務を多くしすぎてやることでいっぱいいっぱいになってしまっても本末転倒ですし、この辺のバランスはやりながら考えていくしかないような気がします。
・外からの見え方は課題になるかもしれません。地域の人に「なにやってるの?」といわれたとき、フリーミッション型は少し困ることも多いそうですが、同じような悩みは付きまとう可能性はあります。
・協力隊が自分から動けるタイプじゃない場合の動き方や業務方法がいまいち確立しておらず、本人負担になってしまう場合もあるのではないかと思います。
▼現役のころから私が感じていた問題は、地域の「地域おこし協力隊」という制度の理解が浅いという点です。
『「地域おこし協力隊」というのは制度の名前であり、人(隊員等)を指すものではない』ということを理解するだけでも変わるとは思うのですが、これに関しては「地域おこし協力隊」という名称がすべて足を引っ張っていると思っています。
便宜上、隊員も「地域おこし協力隊の○○です」と名乗ることはあるでしょうし、それを聞いた人はどちらかといえば制度ではなく人を想像するのが普通だと思います。早めに名称の変更をするべきだと強く感じていました。
あとは行政や我々が地域の人に都度説明するくらいしかないと思いますが、それにも限界があるでしょうし、すでに定着してしまった名称は変更するのも難しいことでしょう。難しい問題だとも感じます。自治体によっては独自の呼称を設けているところもあるようですし、考えてみてもいいかもしれません。現在の須坂市地域おこし協議会は名前が似ているので、もしかしたら余計ややこしくなってしまっているかもとも少し思いました。
▼須坂市において、現在のこの制度はそれなりにいい形で動いているようには感じますが、別の場所、人に対して同じ仕組みがあった時、必ずしもうまく回るようなものになっているとも思えません。
運の部分はまだ大きいような気がしていますが、こればかりは正直いってどうしようもないのでその確率をある程度コントロールできるという点ではよい仕組みになっているように感じます。
▼どこでもそうですが、起業できるか、移住できるかは最終的には地域の収容力に依存すると思います。人がいるかどうか、集められるかどうか、どのような産業があるのか、…等、協力隊の制度とは関係なく動く部分がかなり重要な部分を占めています。こうしたことから「問題をなくす」ということは不可能でしょう。問題や課題を解決するより、予測できる問題や課題を増やして伝えていくことの方が重要かもしれないと感じました。
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以上、アンケート結果から、
冒頭で、協力隊OBの起業活動に同行することで「相談できる仲間がいて」「素早く人脈を築き」「起業まで活動が繋がり」「定住できる」仕組みとして取り組み始めた『地域おこし協力隊信州須坂モデル』であり、今回のアンケート結果から「相談できる仲間がいて」「素早く人脈を築き」については概ね想定どおりの回答になった。しかしながら「起業まで活動が繋がり」については様々な意見が寄せられた。今後は協力隊の中で寄せられた意見を共有し次のステップに繋げていくことが、任期終了後の「定住できる」仕組みづくり、須坂市地域おこし協議会の発展、須坂市の地域振興編へ繋がっていくのではないか。
(信州須坂移住支援チーム 加藤広明)
★隊員の活動の様子はこちらをご覧下さい
須坂市地域おこし協議会ホームページ
https://suzaka-kyougikai.com/